塩化チタン(読み)えんかチタン(英語表記)titanium chloride

改訂新版 世界大百科事典 「塩化チタン」の意味・わかりやすい解説

塩化チタン (えんかチタン)
titanium chloride

酸化数II,III,IVの化合物が知られている。

化学式TiCl2。塩化チタン(Ⅳ)TiCl4水素と混合し,低無電極放電で還元すると得られる暗赤褐色粉末比重3.13。空気中,水,エチルアルコールなどで分解する。酸化されやすい。

無水和物TiCl3と水和物が知られている。TiCl3は,TiCl4を650℃で過剰の水素によって還元すると得られる潮解性の紫色結晶。比重約2.68。430℃で昇華し,600℃で不均化してTiCl2とTiCl4になる。水,塩酸,エチルアルコールに可溶,エーテルに不溶。TiCl3の塩酸溶液からは4水和物[TiCl2(H2O)4]Cl(緑色結晶)が得られる。また,塩化チタン(Ⅳ)TiCl4の塩酸酸性溶液を亜鉛などで還元すると6水和物[Ti(H2O)6]Cl3(紫色結晶)が得られるが,この紫色結晶の濃水溶液をエーテルと振り,塩化水素を飽和させると,これとは別の6水和物[TiCl2(H2O)4]Cl・2H2O(緑色結晶)が得られる。これらはいずれも強い還元剤である。TiCl3ナッタ触媒に用いられる。

化学式TiCl4。チタンを塩素中で350℃に熱するか,酸化チタン(Ⅳ)TiO2炭素を,塩素を通じながら700℃に熱すると得られる無色液体。融点-23℃,沸点136.4℃,比重1.72。屈折率1.61,誘電率2.73(24℃)。気体はTiを中心とした四面体分子TiCl4からなる(Ti-Clの原子間距離は2.18Å)。希塩酸,エチルアルコールに可溶。水でただちに加水分解して塩酸と不溶性の水酸化物になるので,湿った空気中では著しく発煙する。このため煙幕などの発煙剤として用いられる。また,金属チタンの製造原料,チーグラー触媒に用いられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「塩化チタン」の解説

塩化チタン
エンカチタン
titanium chloride

】塩化チタン(Ⅱ):TiCl2(118.77).二塩化チタンともいう.塩化チタン(Ⅲ)の熱分解により得られる.黒褐色の結晶.密度3.13 g cm-3.水素気流中で加熱すると昇華するが,空気中で加熱すると燃える.水には分解して水素を発生しながら溶ける.エタノールに可溶,エーテル,クロロホルム二硫化炭素に不溶.[CAS 10049-06-6]【】塩化チタン(Ⅲ):TiCl3(154.23).三塩化チタンともいう.無水物は四塩化チタン蒸気を水素ガスとともに赤熱管中を通すと得られる.また,四塩化チタンの塩酸酸性水溶液を亜鉛で還元するか,あるいは金属チタンを塩酸に溶かせば,三塩化チタンの紫色の水溶液が得られ,これから紫色の六水和物TiCl3・6H2Oを晶出させることができる.無水物は暗紫色,潮解性をもつ粉末(結晶).密度2.68 g cm-3.440 ℃ で四塩化チタンと二塩化チタンに分解する.水,塩酸に溶け,エタノールに易溶,エーテルに不溶.空気中では常温で徐々に酸化され,湿った空気中ではさらに酸化されやすい.水溶液は強い還元性を示す.還元剤,重合触媒,脱色剤として用いられる.[CAS 7705-07-9]【】塩化チタン(Ⅳ):TiCl4(189.68).四塩化チタンともいう.[CAS 7550-45-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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