塩山(読み)しおのやま

精選版 日本国語大辞典 「塩山」の意味・読み・例文・類語

しお‐の‐やま しほ‥【塩山】

[一] 山梨県塩山市にある山。古くは塩を産出歌枕
古今(905‐914)賀・三四五「しほの山さしでのいそに住む千鳥きみがみよをばやちよとぞなく〈よみ人しらず〉」
[二] 上代、群馬県南西部の荒船山東側のふもとにあったという牧。左馬寮上野国九牧の一つ

えんざん【塩山】

山梨県北東部、甲府盆地の北東隅にある地名。古くから豪族が居住し、濠をめぐらせた屋敷が残る。青梅街道の旧宿場町で、ブドウモモ産地雲峰寺、向岳寺、恵林寺には貴重な文化財が多い。中央本線が通じ、大菩薩峠などへの登山口。昭和二九年(一九五四市制

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デジタル大辞泉 「塩山」の意味・読み・例文・類語

えんざん【塩山】

山梨県甲州市の地名。旧市名。青梅街道の旧宿場町で、甲州ブドウ・モモの産地。恵林寺えりんじ向嶽寺こうがくじがある。平成17年(2005)勝沼町大和村と合併して甲州市となった。→甲州

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩山」の意味・わかりやすい解説

塩山
えんざん

山梨県北東部にあった旧市名(塩山市)。現在は甲州(こうしゅう)市の北部を占める。1954年(昭和29)塩山町が、奥野田(おくのだ)、玉宮(たまみや)、神金(かみかね)、大藤(おおふじ)、松里(まつさと)の5村を編入して、市制施行。2005年(平成17)東山梨郡勝沼町(かつぬまちょう)、大和村(やまとむら)と合併して甲州市となる。大部分が農村で占められる田園都市。旧塩山町は甲府盆地の北東隅に位置し、古くから青梅(おうめ)街道の通ずる交通の要路であったが、1903年(明治36)中央本線の開通によって地方中心地となった。第二次世界大戦前は周辺の養蚕地帯の中心として繭取引市場が開かれ、遠く秩父(ちちぶ)地方からも峠越えに笛吹(ふえふき)川を下って繭が集荷されたこともある。現在は養蚕にかわってモモ、ブドウ栽培が盛んで、旧市域の農地の90%弱が果樹園である。また、山間部のコンニャク、松里の枯露柿(ころがき)(干し柿)は特産品。工業は製材、石材業、ぶどう酒醸造業など。名所には武田氏ゆかりの恵林寺(えりんじ)、市街地に接して箏(そう)曲「千鳥(ちどり)の曲」(塩の山差出の磯(さしでのいそ)にすむ千鳥……)の由来といわれる塩ノ山(553メートル)、その山麓(さんろく)の向嶽(こうがく)寺などがあり、また大菩薩嶺(だいぼさつれい)、大菩薩峠、笠取(かさとり)山、一之瀬高原など秩父多摩甲斐(ちちぶたまかい)国立公園の玄関口ともなっている。そのほか、旧高野家住宅(甘草屋敷(かんぞうやしき))、雲峰寺(うんぽうじ)(本堂など)、放光寺(ほうこうじ)(木造大日如来坐像(にょらいざぞう)など)は国の重要文化財に指定されている。また、塩山温泉、嵯峨塩(さがしお)温泉もある。

[横田忠夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩山」の意味・わかりやすい解説

塩山
えんざん

山梨県北東部,甲州市中・北部を占める旧市域。甲府盆地の北東端にあたる笛吹川と重川の扇状地から,埼玉県境の奥秩父まで広がる。1928年七里村を改め町制施行,塩山町となる。1954年奥野田村,玉宮村,松里村,大藤村,神金村の 5村を編入し,市制施行。2005年勝沼町,大和村と合体して甲州市となった。中心市街地の JR中央本線塩山駅周辺は近世青梅街道の宿場町。扇状地や河岸段丘上でブドウ,モモが栽培され,ワイン,ころ柿を特産。夢窓疎石の開山で武田氏の菩提寺となった恵林寺,臨済宗向嶽寺派の本山向嶽寺をはじめ放光寺,雲峰寺などの名刹があり,恵林寺,向嶽寺の庭園は国指定名勝。また国宝の絹本著色達麿図(向嶽寺所蔵),小桜韋威鎧(こざくらかわおどしよろい。菅田天神社所蔵)など,多数の文化財がある。中世豪族の於曽屋敷や江戸時代の甲州民家を伝える旧高野家住宅(甘草屋敷。国指定重要文化財),甲斐金山遺跡の黒川金山(国指定史跡)なども残っている。甲武信ヶ岳大菩薩峠の登山基地で,中心市街地付近に塩山温泉がある。秩父多摩甲斐国立公園に属する。

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改訂新版 世界大百科事典 「塩山」の意味・わかりやすい解説

塩山 (しおやま)

743年(天平15)の墾田永年私財法が出るころから,寺院の資財帳などに塩山(焼塩山,取塩木山,山)40町歩ないし250町などという記載がみられる。その山とともに塩浜または塩釜の所有を表示したものもあり,塩山とは製塩燃料を伐採する山林をさすものといえる。こうした記載が現れるのは寺院経済の進展による塩需要の増大のため,寺院みずから製塩地を所有することとなったのを示していると思われる。ではなぜその表現に塩浜よりも塩山を主としたのか。これは採鹹(さいかん)技術が幼稚で,海水直煮はもちろん,発生当初の塩浜あるいは塩尻法の段階では,採取鹹水が稀薄で燃料の消耗が多く,採鹹地場よりも燃料山のほうが重要であったからである。あるいは燃料山を塩民に利用させ,地子塩を収納するほうが得策でもあったろう。ちなみに最も発達した近世入浜塩田においても,生産コスト中の燃料費は50%であり,1haの塩田に対して75町歩の山林が必要であったと推計されている。
執筆者:

塩山 (えんざん)

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世界大百科事典(旧版)内の塩山の言及

【塩山[市]】より

…人口2万7117(1995)。市名は市街地の北に接する塩山(しおのやま)(554m)に由来する。中心市街は重川の扇状地上にあり,古くから青梅街道の通じる交通の要路にあたっていたが,1903年中央線の開通によって地方中心地に発展,第2次世界大戦前までは周辺の養蚕地帯の中心として繭取引市場が開かれた。…

※「塩山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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