塩橋(読み)えんきょう(英語表記)salt bridge

翻訳|salt bridge

改訂新版 世界大百科事典 「塩橋」の意味・わかりやすい解説

塩橋 (えんきょう)
salt bridge

溶液の組成が異なる二つの半電池half-cell(単一の電極と電解質溶液とから成る系)を,電極溶液どうしを直接接触させずに,電気的に接続するために用いるしかけ。ガラスの逆U字管やH字形の管に塩化カリウム硝酸カリウム,または硝酸アンモニウムなどの塩類溶液をみたし(図1),管の両端をそれぞれ各半電池の溶液中に浸して用いる(図2)。塩橋内の溶液が外部の溶液と直接混ざり合わないようにするために,管の末端を半融ガラスやろ紙などのように溶液がしみこむもので栓をしたり,末端部の溶液をゼラチン寒天でゼリー状に固めたりすることが多い。溶液どうしの混合が少なく,異種の溶液の接触部に生ずる電位差(液間電位または拡散電位)が小さく,また電気的抵抗が低くなるように,塩橋の形や塩溶液の種類を選ぶことが重要である。
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化学辞典 第2版 「塩橋」の解説

塩橋
エンキョウ
salt bridge

電極電位差の測定や電池の実験などにおいて,二つの電極系の溶液を接続するために用いられる液絡一種.通常,ガラス管を逆U字状あるいはH字状にしたものに塩類溶液を満たしたものを用い,電極系の液が混合しないように管の両端に木芯または綿の栓をしたり,塩橋内を寒天やゼラチンで固めたりして接続する.液間電位差を小さくし,かつ塩橋による回路抵抗の増加を小さくするため,陰陽両イオン移動度がなるべく等しい塩の濃厚溶液が塩類溶液として用いられる.一般に塩化カリウムの濃厚溶液が用いられるが,塩化カリウムが電極系の溶液と接触して反応する場合には,硝酸アンモニウムや硝酸カリウムを代用する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩橋」の意味・わかりやすい解説

塩橋
えんきょう
salt bridge

電池の起電力の測定などの場合に液間電位差の影響を除くために用いられる。電池を構成している2つの単極の電解質溶液を,混り合わないように接触させ,電気的に接続する。U字管に陰陽両イオンの移動度がほぼ等しい塩化カリウムなどの溶液を満たし,管の両端にイオンは通すが溶液は漏れないようにろ紙や綿で栓をしたものをつくり,両単極の電解質溶液にまたがせる。これを塩橋という。管の両端をゼラチンや寒天で固めることもある。塩化カリウム溶液が電池の電解質溶液と接触して化学反応を起す場合には,硝酸カリウムや硝酸アンモニウム溶液が塩橋に使われる。

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