壺中の天地(読み)こちゅうのてんち

精選版 日本国語大辞典 「壺中の天地」の意味・読み・例文・類語

こちゅう【壺中】 の 天地(てんち)

(後漢費長房が市の役人をしていたとき、店先に壺を掛けて商売をしていた薬売り老人が売り終わると壺の中にはいったのを見、頼んで壺の中に入れてもらったところ、りっぱな建物があり、美酒、嘉肴(かこう)が並んでいたので共に飲んで出てきたという「後漢書‐方術伝下・費長房」の故事から) 俗世界とはかけ離れた別天地。酒を飲んで俗世間のことを忘れる楽しみ。仙境壺中の仙。壺中の天。壺中。
※和漢朗詠(1018頃)下「壺中天地は乾坤(けんこん)の外 夢の裏(うち)の身名は旦暮の間〈元稹〉」

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デジタル大辞泉 「壺中の天地」の意味・読み・例文・類語

壺中こちゅう天地てんち

《後漢の費長房が、市中に薬を売る老人が売り終わると壺の中に入るのを見て一緒に入れてもらったところ、りっぱな建物があり、美酒・佳肴かこうが並んでいたので、ともに飲んで出てきたという、「後漢書」方術伝の故事から》俗世間を離れた別世界。また、酒を飲んで俗世間を忘れる楽しみ。仙境。壺中の天。
[類語]別天地別世界理想郷桃源郷無何有むかうさと武陵桃源ユートピアシャングリラザナドゥーエルドラドアルカディア

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故事成語を知る辞典 「壺中の天地」の解説

壺中の天地

俗世間とはかけ離れた、別天地を指すことば。また、酒を飲んで、俗世間のことを忘れる楽しみのたとえ。

[使用例] 井戸の中のカエルにもそれぞれの個性があり、壺中の天地にも風波が絶えないことを知るべきであろう[末川博*彼の歩んだ道|1965]

[由来] 「後漢書ちょうぼう伝」に出て来るエピソードから。一~二世紀、中国の後漢王朝の時代。市場の役人をしていた費長房は、店先につぼを掛けて薬を売っていた老人が、商売が終わるとその壺の中に入ってしまったのを目撃しました。市場にいたほかの人は、まったく気づいていないようす。不思議に思った彼は、老人に酒や干し肉を贈りました。彼の心の中を察したのか、老人は、「明日、また来なさい」という答え。翌日、長房は、老人と一緒にその壺の中に入れてもらいました。すると、中には立派な建物があり、いいお酒やすばらしい料理が並んでいたので、一緒に飲み食いして、大いに楽しんだのでした。費長房は、これをきっかけに修行をして、仙人になったということです。

〔異形〕壺中の天/壺中天。

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