多胎減数中絶手術(読み)たたいげんすうちゅうぜつしゅじゅつ

百科事典マイペディア 「多胎減数中絶手術」の意味・わかりやすい解説

多胎減数中絶手術【たたいげんすうちゅうぜつしゅじゅつ】

双子双生児)以上の多胎妊娠をした妊婦の妊娠初期に一部の胎児を中絶させて数を減らし,1人か2人の胎児を残して出産する手術のこと。不妊治療のために,排卵誘発薬を用いたり,体外受精の成功率を高くするために2つ以上の受精卵を子宮内に入れることがあるが,これを行うと,多胎妊娠になりやすい。多胎妊娠では,母親に妊娠中毒症などの合併症が起きたり,子どもは早産未熟児として生まれやすく,脳性小児麻痺になる確率も高くなる。これを防ぐために行われるのが,この〈多胎減数中絶手術〉である。 方法としては,超音波検査装置で子宮内をみながら,胎児に塩化カリウムを注入して心臓を停止させる。 日本では1986年に諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)院長の根津八紘医師が初めて行い,1998年までに300件以上の手術を行った。日本母性保護産婦人科医会などが認めていないため,この手術の実施を公表しているのは同クリニックしかないが,現実には多くの医療機関が水面下で行っているとみられている。 厚生省の〈不妊治療の在り方に関する研究班〉(班長,矢内原巧・昭和大学医学部教授)の調査によると,1994〜1996年の3年間に,大学病院など15施設で87例の報告があった。 なお,世界婦人科学会はこの手術を認めており,欧米では広く行われている。特に米国では,母体やすべての胎児を危険にさらしたり,全部を中絶するよりも,1人か2人の命を確実に守るほうがいい,とする考えが強い。→妊娠中絶

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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