夜討曾我狩場曙(読み)ようちそがかりばのあけぼの

精選版 日本国語大辞典 「夜討曾我狩場曙」の意味・読み・例文・類語

ようちそがかりばのあけぼの【夜討曾我狩場曙】

歌舞伎脚本。時代物。五幕。河竹黙阿彌作。明治一四年(一八八一東京新富座初演。「曾我物語」などにより、富士巻狩曾我兄弟工藤祐経仮屋に忍び入り、敵を討つが、十郎は仁田四郎に討たれ、五郎は捕われ、頼朝と狩場問答をするところまでを脚色活歴物として演出された。通称夜討曾我」「敷皮の五郎」。

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改訂新版 世界大百科事典 「夜討曾我狩場曙」の意味・わかりやすい解説

夜討曾我狩場曙 (ようちそがかりばのあけぼの)

歌舞伎狂言。時代物。5幕。通称《夜討曾我》《敷皮の五郎》。河竹黙阿弥作。1881年6月東京新富座初演。配役は工藤祐経・曾我五郎を9世市川団十郎,鬼王新左衛門を5世尾上菊五郎,曾我十郎・頼朝を中村宗十郎,団三郎を初世市川左団次,和田義盛を4世中村芝翫,五郎丸を5世市川小団次,喜瀬川の亀菊を8世岩井半四郎など。《曾我物語》その他の作に拠り,これより前の1874年同作者の《蝶千鳥曾我実伝(ちようちどりそがのじつでん)》を改作したもの。いわゆる明治の活歴スタイルの曾我狂言で,団十郎史実を重んじ討入り扮装を,腹巻に小手脛当(こてすねあて),武者草鞋(むしやわらんじ)としたのに対し,中村宗十郎は従来どおり素足に袴の股立を取っただけのスタイルだったのでチグハグな印象を与え,〈火事見舞に水見舞〉と評されたのは有名だが,両者とも自説を押し通し,数日間そのままで演じた。仲介者が宗十郎を説得,1日だけ団十郎に調子を合わせたが翌日から休場した。団十郎は独特の肚芸と,新時代らしい道徳的な内容の,忠君愛国的な心情を吐露するせりふで従来の江戸の曾我物とははっきり異なったところを示した。これらの点から,本作は団十郎と活歴との関連性,および時代思潮をみるうえで意義を持っている。現在では四幕目の〈討入の場〉がおもに上演される。狂言作者の手による曾我狂言の文字通り最後の作品で,ながい江戸の曾我物もここにその終止符を打ったのである。
活歴物 →曾我物
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「夜討曾我狩場曙」の解説

夜討曾我狩場曙
ようちそが かりばのあけぼの

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
河竹新七(2代)
初演
明治7.3(東京・村山座)

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