大威徳明王(読み)だいいとくみょうおう

精選版 日本国語大辞典 「大威徳明王」の意味・読み・例文・類語

だいいとく‐みょうおう ダイヰトクミャウワウ【大威徳明王】

(「大威徳」はYamāntaka (閻曼徳迦)の訳語) 仏語五大明王の一つ。西方を守護し、衆生を害するいっさいの毒蛇悪龍を征服するという。本地(ほんじ)阿彌陀如来。その像は身は青黒く、六面・六臂(ろっぴ)・六足で忿怒(ふんぬ)の相を表わし、左に戟・弓・索、右に剣・箭・棒を持つ。また、水牛に坐すともいう。

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デジタル大辞泉 「大威徳明王」の意味・読み・例文・類語

だいいとく‐みょうおう〔ダイヰトクミヤウワウ〕【大威徳明王】

《〈梵〉Yamāntakaの訳》五大明王の一。本地は阿弥陀如来で、西方を守護して、人々を害する毒蛇・悪竜や怨敵おんてきを征服するという。頭・腕・脚が六つずつあり、剣・ほう・輪・しょを持ち、怒りの形相をして火炎に包まれ、水牛に乗る姿の像が多い。閻曼徳迦えんまんとくか六足尊

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改訂新版 世界大百科事典 「大威徳明王」の意味・わかりやすい解説

大威徳明王 (だいいとくみょうおう)

サンスクリット名Yamāntaka。焰曼徳迦,降閻魔尊,聖閻曼徳迦威怒王,六足尊ともいう。五大明王の一尊で,西方の尊像として意味づけられる。形像は《大日経疏》その他に説かれ,六面六臂六足で水牛に乗る。肉身は青黒色で火焰が身体を包み,忿怒の表情を見せ,左右6本の手には戟(ほこ)と剣,弓と箭(や),索と棒を持つ。現存作品の中には,獣座となる水牛が座り,尊像がまたがるものが大半を占めるが,疾走する水牛の背に片側の3本足で立ち,箭を射る姿勢を見せる像が絵画に数例だけ見られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大威徳明王」の意味・わかりやすい解説

大威徳明王
だいいとくみょうおう

五大明王の一つ。西方に配する。八大明王の一尊でもある。サンスクリット語でヤマーンタカyamāntaka(閻曼徳迦威怒王)という。現図(げんず)両界曼荼羅(まんだら)の胎蔵(たいぞう)界では持明(じみょう)院に配する。像容は六面六臂(ぴ)六足で水牛に乗じ、三つ目で髑髏(どくろ)を瓔珞(ようらく)とする。『勝軍(しょうぐん)大威徳明王法』では戦勝を祈願する。唐招提(とうしょうだい)寺蔵の画像は水牛の背上に立つ異形。牛伏(ごふく)寺(長野県)、石馬(いしば)寺(滋賀県)には独尊の彫像がある。

[真鍋俊照]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大威徳明王」の意味・わかりやすい解説

大威徳明王
だいいとくみょうおう
Yamāntaka

五大明王の一つで西方の守護神。この明王を本尊として行う修法を大威徳法という。6面,6臂,6足で忿怒形に表わされる。単独尊,または五大明王として造像されるときは,水牛に乗る姿が一般的。画像の遺例としては教王護国寺本,醍醐寺本などの五大尊像に含まれるもの (ともに国宝) のほか,単独尊の例としては,11世紀のボストン美術館本をはじめ談山神社本などがあり,鎌倉時代には水牛の上に立ち,激しい勢いを示すもの (唐招提寺,根津美術館本) も現れた。彫像では教王護国寺講堂の『五大明王像』 (839,国宝) 中のものが最も古く著名。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大威徳明王」の解説

大威徳明王 だいいとくみょうおう

密教の明王。
阿弥陀(あみだ)如来の化身で,生あるものを害するすべての毒蛇悪竜,怨敵(おんてき)を打ちたおす。六面六臂(ろっぴ)六足の忿怒(ふんぬ)相で,水牛にのる。日本では平安時代後期から戦勝祈願のため信仰された。比叡山(ひえいざん)延暦(えんりゃく)寺,京都大覚寺などの像が有名。五大明王のひとつで,西方を守護する。六足尊とも。

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世界大百科事典(旧版)内の大威徳明王の言及

【ウシ(牛)】より

…同様の意味づけは地中海から西アジアまで広がるが,牛はとくにインド神話において重要な役を演じ,今日でも,その力(運搬,農耕),乳,排泄物(燃料など)をもって人間に大きい恩恵を施す神聖な動物とされている。またヒンドゥー教ではシバ神の聖獣であり,ひいては仏教でも大威徳明王の乗物ともなっている。聖獣としての牛はしばしば雄牛であり,これはその強い力と湾曲した角(三日月と同形)ゆえにとくに意味をもつのであろう。…

※「大威徳明王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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