大学開放(読み)ダイガクカイホウ(英語表記)university extension

デジタル大辞泉 「大学開放」の意味・読み・例文・類語

だいがく‐かいほう〔‐カイハウ〕【大学開放】

公開講座などにより、大学教育の機会を広く一般社会に開放すること。大学拡張

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「大学開放」の意味・読み・例文・類語

だいがく‐かいほう ‥カイハウ【大学開放】

〘名〙 大学教育の機会を一般に開放すること。生涯教育一環として公開講座等を行なう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大学開放」の意味・わかりやすい解説

大学開放
だいがくかいほう
university extension

大学生に限らず、一般市民に対し広く大学教育の機会を開放する方策。大学拡張とよばれることもある。大学には基本的に、研究、教育、地域社会への奉仕の三つの機能が期待されているが、大学開放は地域社会への奉仕にかかわるものである。大学開放は市民の要求から生まれ、19世紀後半のイギリスに端を発する。1867年、ケンブリッジ大学の講師であった教育学・政治学者ジェームズ・スチュアートJames Stuart(1843―1913)が、イングランド婦人団体要請に応じて行った学外講義がその始まりとされる。1873年にはケンブリッジ大学が、1876年にはロンドン大学が、1878年にはオックスフォード大学がそれぞれ正式に大学開放事業を開始した。1903年アルバート・マンスブリッジAlbert Mansbridge(1876―1952)により設立された労働者教育協会Workers' Educational Association(WEA)は、労働者の多様な学習要求にこたえ、大学と提携して学習内容を決定し、よりきめの細かい指導を行うチュートリアル・クラスtutorial classを発足させた。1919年の成人教育委員会最終報告書は、大学に構外教育部extramural departmentの設置を勧告し、イギリスの大学開放講座は、大学独自のものと、WEAとの協力によるものに分かれ、今日に至っている。

 アメリカでも、1890年代から大学開放が始まった。州立大学は州民の税金で運営されているために、納税者である州民に利益を還元すべく地域社会への奉仕が求められ、州民の生活改善全般に役だつことを使命としていた。そのために州立大学による成人教育の伝統が地域社会に根づいてきた歴史がある。1907年にはウィスコンシン大学が開放事業部を設置して、政治、経済、社会、文化にわたる領域についての教育の機会を提供した。当初、受講者は教育水準の低い層の人々であったが、1960年代以降は、高学歴化と資格証明書主義credentialismの興隆に伴い、高い学歴と所得および社会的地位を有する人々を対象として、学位取得や職能・資格向上のためのサービスが行われてきている。

 日本では、第二次世界大戦前、文部省(現文部科学省)委託の大学公開講座がわずかにみられたが、大学自らこの事業を開始するまでには至らなかった。戦後、1947年(昭和22)制定の学校教育法第69条(現行法では第107条)と社会教育法第44条~第48条が公開講座による成人教育の振興を規定し、1950年代以降、大学公開講座数は漸増している。1980年代に入ると、人々の間に生涯学習の要求が高まり、国立大学に大学開放センター、生涯学習教育研究センターなどが、私立大学にはエクステンションセンター、オープンカレッジなどが開設された。また社会人のために、入試科目における面接の比重を高くした社会人特別入試や、働きながら通学できるように昼夜開講制をとったり、特定の科目だけを履修できる科目等履修生の制度が実施されるようになった。2005年(平成17)には、全国726校中715校で、2万3624の公開講座が開かれ、111万1395人の受講者を集めた。2007年に社会人特別選抜入試を実施したのは495大学である。同年に昼夜開講制を導入したのは50学部、307大学院であり、夜間大学院は28あった。また科目等履修生の制度を開設した大学は、2006年で国立87校、公立71校、私立539校の合計697校であった。

 日本はイギリスやアメリカに比べて昼間部の比重が大きく、働きながら学ぼうとする社会人の要求に十分にはこたえていない。今後、少子化による18歳人口の減少による経営上の困難が予想される一方で、人々の生涯学習の需要が高まりをみせるなか、大学や大学院における社会人学生の増加への対応が課題となるであろう。

[木村 浩・赤尾勝己]

『マイケル・D・スティーヴンス著、渡邊洋子訳『イギリス成人教育の展開』(2000・明石書店)』『五島敦子著『アメリカの大学開放――ウィスコンシン大学拡張部の生成と展開』(2008・学術出版会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大学開放」の意味・わかりやすい解説

大学開放
だいがくかいほう

大学拡張」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の大学開放の言及

【大学拡張】より

…大学開放ともいわれ,大学における学問研究の成果や講義などの大学教育の開放をとおして,ひろく一般民衆に高等教育の機会を普及する事業,またはその実現を担う教育運動をいう。 大学拡張は,19世紀中ごろイギリスで起こった大学改造運動と密接な関連をもって生み出され,1870年代にケンブリッジ,ロンドン,オックスフォードの各大学で次々にはじめられた。…

※「大学開放」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android