大念仏(読み)だいねんぶつ

精選版 日本国語大辞典 「大念仏」の意味・読み・例文・類語

だい‐ねんぶつ【大念仏】

[1] 〘名〙
大声阿彌陀の名をとなえること。大念。
拾遺往生伝(1111頃)上「自他を勧進して、七日念仏を修せり。いはゆる超証寺の大念仏これなり」
釈迦念仏のこと。
③ 特に、京都嵯峨の清涼寺釈迦堂で陰暦三月六日から一五日まで、多数の人々が参集して行なわれる釈迦念仏。
※看聞御記‐応永二六年(1419)三月一四日「聞、嵯峨釈迦堂大路在家等炎上、大念仏群集之間軈打消云々」
④ 東京隅田川畔の木母寺で陰暦三月一五日の梅若忌に行なわれる大念仏法会
※雑俳・柳多留‐七(1772)「よし原を大念仏ですすめこみ」
浮世草子男色大鑑(1687)八「やうやう平野の里大念仏(ネンブツ)御堂休みしに」

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デジタル大辞泉 「大念仏」の意味・読み・例文・類語

だい‐ねんぶつ【大念仏】

大声で阿弥陀仏の名を唱えること。また、その法会。陰暦3月15日に東京隅田川のほとりの木母寺で行われるものが有名。
釈迦牟尼しゃかむにの名を唱えること。また、その法会。陰暦3月6日から15日まで京都嵯峨さが清涼寺釈迦堂で行われるものが有名。
大念仏宗」または「大念仏寺」の略称

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大念仏」の意味・わかりやすい解説

大念仏
だいねんぶつ

大ぜい集まって念仏を唱える行事。世阿弥(ぜあみ)作の能『百万』の背景となった嵯峨釈迦(さがしゃか)堂清凉寺(せいりょうじ)(京都市右京区)の大念仏は1279年(弘安2)に、また壬生寺(みぶでら)(京都市中京区)の大念仏は1300年(正安2)に円覚上人(えんがくしょうにん)によって始められたと伝えられ、前者は嵯峨大念仏狂言、後者は壬生狂言として国の重要無形民俗文化財に指定されている。ともに念仏狂言として黙劇の能狂言を今日に伝えている。ほかに千本閻魔(えんま)堂(京都市上京区)の大念仏にも狂言があるが、前二者に対して台詞(せりふ)を用いる点が異なる。静岡県浜松市一帯に広く分布している遠州大念仏は、7月13日から15日に寺院施餓鬼(せがき)と新盆の回向(えこう)を主として行う。その起源は、鎌倉初期とも、三方(みかた)ヶ原(はら)の合戦で討ち死にした武田方の怨霊(おんりょう)供養のため徳川家康の命により始まるともいわれる。青年層が主体となり、30~40人で一組を構成し、太鼓、双盤(そうばん)、笛、摺鉦(すりがね)にあわせ、歌枕(うたまくら)という念仏歌を唱和する。山梨県上野原市秋山無生野(むしょうの)や、岩手県下にも花巻市宮野目(みやのめ)などの大念仏があり、大念仏系統のものは各地にみられるが、盛岡周辺の各所に分布する大念仏剣舞(けんばい)は祖霊供養の大念仏に剣舞が結び付いたものである。

高山 茂]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「大念仏」の解説

大念仏
(通称)
だいねんぶつ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
けいせい壬生大念仏
初演
元禄15.1(京・古今座)

大念仏
だいねんぶつ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
文化9.春(大坂・堀江芝居)

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世界大百科事典(旧版)内の大念仏の言及

【踊念仏】より

…平安中期の《日本往生極楽記》がその功績をたたえていることは有名。踊念仏は大衆がいっしょに踊ることによって一体感を持つので,大念仏ともよばれ,また田楽と結合して〈やすらい踊〉ともなった。これは念仏が死霊を鎮める功力があるので,疫病などをおこす御霊(ごりよう)を鎮魂するための宗教的大衆運動になったのである。…

※「大念仏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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