日本大百科全書(ニッポニカ) 「大泉黒石」の意味・わかりやすい解説
大泉黒石
おおいずみこくせき
(1894―1957)
小説家。本名清。長崎に生まれる。父はロシア人で、幼少のころはロシアやヨーロッパで生活し、帰国後、第三高等学校、第一高等学校などで学ぶ。『中央公論』に連載した『俺(おれ)の自叙伝』(1919~21)で注目された。ゴーリキーの『どん底』の翻訳(1921)、『露西亜(ロシア)文学史』(1922)、『老子』(1923)などのほか、『黄(ウオン)夫人の手』(1924)、『黒石怪奇物語集』(1925)、『眼(め)を捜して歩く男』(1928)などの怪奇小説、『人間開業』(1926)、『人間廃業』(1926)などのユーモア小説がある。ダダイスト辻潤(つじじゅん)らと交友があり、虚無的な思想がみられる。
[海老井英次]
『玉川しんめい著『日本ルネッサンスの群像』(1977・白川書院)』