大野川(読み)オオノガワ

デジタル大辞泉 「大野川」の意味・読み・例文・類語

おおの‐がわ〔おほのがは〕【大野川】

熊本県東部・大分県南東部・宮崎県北部を流れる大野川水系の本流。祖母そぼ付近に源を発し、北東流して大分市別府湾に注ぐ。大分県下最大の川。長さ107キロ。下流は大分平野三角州を形成している。

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日本歴史地名大系 「大野川」の解説

大野川
おおのがわ

祖母そぼ(一七五七メートル)の南西方、宮崎県高千穂たかちほ町に源を発し北東方向に流れて大分県域に入り、竹田盆地貫流、多くの支流を合せ、犬飼いぬかい町付近から方向を北に変え、大分市上戸次かみへつぎで大分平野に出、同市家島いえじまで別府湾に注ぐ。流域は大分・熊本・宮崎の三県にまたがり、流域面積約一四五五平方キロ、幹川流路総延長約一〇六キロに及ぶ九州における有数の一級河川である。当川に入るおもな支流は、左岸新藤しんどう川・山崎やまさき川・玉来たまらい川・稲葉いなば川・濁淵にごりぶち川・平井ひらい川・あかね川・柴北しばきた川・河原内かわらうち川・判田はんだ川、右岸緒方おがた川・奥岳おくだけ川・三重みえ川・野津のつ川・吉野よしの川・大内おおうち川などで、また大分市南東部で乙津おとづ川が左岸西方に分派する。分流乙津川は左岸にはら川を合せる。

〔呼称〕

古く当川は藤原ふじはら川・利水としみつ川・犬飼川・白滝しらたき川・白嵩しらたか川・おお川・ほん川・戸次川などとよばれていた。しかしこれらの名も全流路をさしてのものではない。また「豊後国志」に「郡之大川、其源直入諸水、会十川東、曰広瀬、水自崖上落、名蝙蝠瀑、乃為大野川、過炭焼及柏野古城下、南折経軸丸東、過高雄堡下、経漆生、為平治川」とあり、また「太宰管内志」に引く「亀山随筆」にも「大野川とて、国中第一の大川あり、一ノ名は、藤原川と云、(中略)緒方・大野二郷の間をさして、むねと大野川とは云なり」とあって、大野川の名はおもに大野郡内の呼称として用いられている。

大野川
おおのがわ

函館平野の西部をほぼ南東流する二級河川。流路延長二八・六キロ(うち指定区間二三・五キロ)、流域面積一二四・三平方キロ。松前半島脊梁山地の一部をなす設計もつけ(七〇一・五メートル)付近に源を発して北流した後、東方から南東方向に転じ、大野町字本郷ほんごう付近からは南流する。以後、函館平野を蛇行して上磯かみいそ町字久根別くねべつ西方で函館湾に注ぐ。上流では上二股かみふたまた沢・中二股なかふたまた沢・東股ひがしまた沢・石川いしかわ沢・子熊こぐま沢など、函館平野では西から文月ふみづき川が合流。

大野川
おおのがわ

小佐渡山地の大野山と北方きたがた山を水源とし、大野地内を北西流して新穂町の南側を流れ、ここでほとんど新穂川と並行し、さらに一転南方に向かい舟下ふなしも皆川みながわ地内を流れ、皆川と現畑野はたの町の境界近くで新穂川と合流して国府こうの川となる。農業用水として夜の水は大野、昼の水は大野・舟下・皆川・武井たけい上新穂かみにいぼに取水権があった。昼の水の取入口(堰)は三十数ヵ所に及び、元禄七年(一六九四)の各村の検地帳登載の田に取水権があり、堰の止め方や分け方にも藁止め・ガラ止め・石止めなど独特のものがあった。

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百科事典マイペディア 「大野川」の意味・わかりやすい解説

大野川【おおのがわ】

大分県南部の阿蘇山東麓に発し,ほぼ北東流して大分市で別府湾に注ぐ川。長さ107km,流域面積1465km2。上流部は阿蘇溶岩の地溝帯を流れ竹田盆地を形成,下流は大分川などとともに大分平野をつくる。江戸時代には岡藩・臼杵藩が河岸を置いて舟運を行った。上・中流で灌漑(かんがい),発電に利用。河谷沿いに豊肥本線が通じる。
→関連項目犬飼[町]大分[県]大分平野緒方[町]三重[町]

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改訂新版 世界大百科事典 「大野川」の意味・わかりやすい解説

大野川 (おおのがわ)

大分・宮崎県境にそびえる祖母山に源を発し,大分県中央部を北東流する県下最大の河川。幹川流路延長107km,全流域面積1460km2。稲葉川,緒方川,奥岳川など多くの支流を集めて,大分市鶴崎で別府湾に注ぐ。豊肥本線がほぼこの谷に沿い,下流に大分平野東部を形成し,河口に建設された大分・鶴崎臨海工業地域の用水源として,また流域によく発達した用水路の水源として利用されている。とくに上流域竹田盆地一帯にみられる熊沢蕃山ゆかりの多くの用水路(刈小野(かりおの)井路ほか)は有名。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大野川」の意味・わかりやすい解説

大野川
おおのがわ

大分県,宮崎県境の祖母山付近に発し,大分市鶴崎で別府湾に注ぐ川。全長 107km。大分県最長。流路に沿って走る JR豊肥本線と国道 10号線,57号線は,大分と熊本を結ぶ重要な交通路となっている。上流部には樹枝状の開析谷が発達し,阿蘇溶岩に覆われた両岸の平坦面は畑地に利用される。上・中流部では豊後大野市犬飼までの間に 100をこえる支流を合わせ,谷底平野は水田に利用。大分市戸次 (へつぎ) 付近から下流は大分平野の沖積地で,水田に利用される。河口では分流により複合三角州が形成されている。農業用水としての利用は江戸時代から行なわれ,多くの井路が開削されたが,近年では発電と農業用水を目的とした昭和井路が有名。 1965年以降は大分臨海工業地域工業用水を供給している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大野川」の意味・わかりやすい解説

大野川
おおのがわ

大分・熊本・宮崎県境にそびえる祖母山(そぼさん)付近(宮崎県側)に源を発し、熊本県の東部、大分県の南部を北東方へ流れ、上・中流で玉来(たまらい)川、稲葉(いなば)川、緒方(おがた)川、奥岳(おくだけ)川、茜(あかね)川、野津(のつ)川、柴北(しばきた)川などをあわせ別府湾に注ぐ川。大分県下最大の河川で、一級河川。延長107キロメートル、流域面積1460平方キロメートル。灌漑(かんがい)面積9800ヘクタール。阿蘇(あそ)溶結凝灰岩に覆われた地溝帯を深く侵食するため、上・中流では氾濫(はんらん)することなく、下流部に水害をもたらすと同時に、氾濫原の厚い堆積(たいせき)土は野菜栽培の恵みを与えてきた。中流には小発電所が多く、近年は工業用水としての価値も大きくなっている。

[兼子俊一]

『『大野川――自然・文化・教育』(1977・大分大学教育学部)』

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世界大百科事典(旧版)内の大野川の言及

【大分[市]】より

…中世大友氏が豊後国を支配してこの地にあり,義鎮(宗麟)の時代には九州6ヵ国の守護職を手中に収め,明やポルトガルと貿易をして繁栄したが,近世は領国は解体され小藩分立となり大分川流域地方を支配した小藩が府内にあり,当時の城跡と内堀を残している。中心市街地は旧城下町の西半分にあたる地域に発達し,東方の大野川下流部にある鶴崎の市街地は近世の港町であった。1900年大分~別府を結んで豊州鉄道(日豊本線の前身)が通り,28年豊肥本線,34年久大本線が全通してその分岐点となり,東九州の交通の中心となった。…

※「大野川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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