天命(読み)てんめい

精選版 日本国語大辞典 「天命」の意味・読み・例文・類語

てん‐めい【天命】

〘名〙
① 天の命令。天が人間に与えた使命。天のめぐりあわせ。天道天理
※権記‐寛弘八年(1011)七月二〇日「君恩必欲報、天命必可祈者也」
※謡曲・舟弁慶(1516頃)「神明仏陀の冥感に背き、天命に沈みし平氏の一類」 〔易経‐萃卦〕
② 天から与えられたいのち。天の定めた人間の寿命天寿
※日本後紀‐延暦二四年(805)八月癸亥「終以天命、卒時五十九」
史記抄(1477)一〇「天命を全して先祖に奉するか簡要ぞ」 〔法言‐問明〕
③ 天の下す罰。天罰。
※浮世草子・武家義理物語(1688)一「其心を曇せけるは、ならびなき曲者(くせもの)天命(テンメイ)もをそろし」
天子の命令。天皇の命令。勅命
性霊集‐三(835頃)勅賜屏風書了即献表「奉宣聖旨、令空海、書両巻、古今詩人秀句者、忽奉天命、驚悚難喩」

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デジタル大辞泉 「天命」の意味・読み・例文・類語

てん‐めい【天命】

天の命令。天が人間に与えた使命。「人事を尽くして天命を待つ」
人の力で変えることのできない運命。宿命。
天の定めた寿命。天寿。「天命を全うする」「天命が尽きる」
天の与える罰。天罰。
「―とはいいながら富五郎はばたばた苦しみまして」〈円朝真景累ヶ淵
[類語](2運命運勢命運天運巡り合わせ回り合わせ星回り命数暦数宿命宿運定め時運因縁/(3寿命天寿命数命脈余命

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天命」の意味・わかりやすい解説

天命
てんめい

旧中国で、超越的存在としての天が人間に命じ与えたものをいう。西周時代には、天は、無道の君主から天子たるべき命を取り上げ、新しい王朝に命を降(くだ)すとされた。これは、殷(いん)を滅ぼした周がその位置を正当化しようとしたことによるもので、『書経』『詩経』や金文(きんぶん)に現れる。この考え方は、王朝の交代を説明する易姓(えきせい)革命原理として、以後も中国の政治思想や歴史意識に大きな影響を残した。天命は、天下全体の問題として考えられたとともに、個々の人間の段階では、運命の意味において、さらには、人間の固有の道徳性を内容とするものとして解された。『論語』に「天命を知る」とあるのはそれである。また一般的には、宿命観を表すことばとして広く使用された。

[内山俊彦]

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改訂新版 世界大百科事典 「天命」の意味・わかりやすい解説

天命 (てんめい)

運命をいう。原義は天の神の命令という意味であったが,天の命令は人力ではいかんともしがたいものであるところから,人間の外にあって,人間のあり方を規定する力を意味するようになった。しかし〈使命〉の意味に解することがある。天命に〈運命〉と〈使命〉の2義が含まれているため,《論語》の〈五十にして天命を知る〉の天命は,運命(自分にはこれだけしかできない)なのか,使命(これだけはどうしてもしなければならない)なのか,解釈が分かれている。
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百科事典マイペディア 「天命」の意味・わかりやすい解説

天命【てんめい】

中国思想用語。もと(天帝)から与えられた命令の謂で,〈運命〉と〈使命〉の両義をもつ。
→関連項目易姓革命禅譲放伐天子

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普及版 字通 「天命」の読み・字形・画数・意味

【天命】てんめい

天の命。使命。〔論語、為政〕子曰く、吾(われ)十五にして學のに志し、三十にして立つ。四十にして惑はず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)ふ。

字通「天」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天命」の意味・わかりやすい解説

天命
てんめい
Tian-ming

天の命令。あらゆる中国思想に共通して存在する観念であるが,儒教においてはその基礎的な概念となった。天命には2側面がある。1つは,『中庸』の冒頭の「天の命ずる之を性と謂う」に端的に示されているように人間の内面と結びつく修養倫理学説であり,これは宋代に朱子ら道学者たちによって再構築された。もう1つは,天命を受けた天子による天下統治の政治学説であり,易姓革命の王朝交代に理論を提供した。

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デジタル大辞泉プラス 「天命」の解説

天命

韓国のテレビドラマ。2013年4月放映開始(全20話)。出演は、イ・ドンウク、ソン・ジヒョ、ソン・ジョンホほか。

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世界大百科事典(旧版)内の天命の言及

【天明】より

…現栃木県佐野市街の南西部分。天命とも書いた。特産物の天明鋳物は古くから知られ,〈東山時代,関東の天明釜をもって良とす〉(《和漢三才図会》)と,西の芦屋釜に対して高い評価をうけている。…

【天子】より

…中国において天帝の息子として,天帝に代わって全世界を統治する者をいう。周王朝の初年,周公(旦)らが発展させたという天命の思想によれば,天帝は天の命令を下して一つの王朝(それは血縁関係で継承される)に天下の統治をまかせるのであるが,その王朝が徳を失うと天帝はそれを見捨て,別に徳ある者を見つけ,その者を天の元子(あととり息子)と認知して,代わって天命を与える(天人相関説)。その子孫が代々天子として,天に見捨てられるまで,天下を統治してゆく。…

※「天命」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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