太平広記(読み)たいへいこうき(英語表記)Tài píng guǎng jì

精選版 日本国語大辞典 「太平広記」の意味・読み・例文・類語

たいへいこうき ‥クヮウキ【太平広記】

中国の説話物語集。五〇〇巻。宋の李昉(りぼう)らの奉勅撰。太平興国二年(九七七)着手、翌年成立。漢から五代までの小説、説話などを集め九二項目に分けてその出典を記したもの。引用書物四七五種。一説話の発展の跡が知られ、信頼できる小説資料として尊重される。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「太平広記」の意味・読み・例文・類語

たいへいこうき〔タイヘイクワウキ〕【太平広記】

中国の説話集。500巻。宋の太宗の命で李昉りぼうらが編。978年(太平興国3年)成立。漢から宋初までの説話・伝奇などを92項目に分けて収録。引用書目475種。「枕中記」なども含まれ、後世の文学作品の材料ともなった。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「太平広記」の意味・わかりやすい解説

太平広記 (たいへいこうき)
Tài píng guǎng jì

中国,漢より北宋初期までの小説類をひろく集めた書。北宋の太平興国3年(978)に李昉(りぼう)などによって奉勅撰された。全500巻,目録10巻。7000余編の物語がその内容によって神仙・方士・異僧・報応・名賢・貢挙・豪俠・儒行・書・画・医・相・酒・詼諧かいかい)・婦人・情感・夢・幻術・神・鬼・妖怪・再生・竜・虎・狐・蛇・雑伝記など92項目に大分類され収録されている。約500種の古小説および小説集から採録されているが,現在はその半数が散逸しているので,この書は貴重である。原本は981年に木版印刷されたが,不急不用の書籍ということで増刷されなかったため流伝が少なく,ようやく明末におよんで談愷(たんがい)や許自昌によって校訂再刊され,清の黄晟(こうせい)により小型本が出版されて広まった。朝鮮では李朝初期に輸入され,《太平広記詳節》《太平広記諺解》が作られて広く愛読され,李朝漢文小説に影響を与えた。日本でも江戸初期には《怪談全書》が出るなど,読本や黄表紙などに多くの題材を提供した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「太平広記」の意味・わかりやすい解説

太平広記
たいへいこうき

中国、宋(そう)代の物語全書。500巻。977年、『太平御覧(たいへいぎょらん)』と同じく、李昉(りほう)らが勅命を受けて編纂(へんさん)にとりかかり、翌年完成した。内容は、神仙、女仙、道術、方士から動植物に至るまで、類書風にたてられた92の項目のもとに、上代から宋代に至るまでの間に著された小説を集め、それぞれの話の末に出典を付記している。集められた話は、志怪(しかい)小説、志人小説、伝奇小説など、宋代以前の文言(文語体)小説。今日もはや原形のみられない上代の書物からの引用が多いので、その意味でも利用価値は高い。刊本としては、明(みん)の談愷(たんがい)の出版したもの(談本(だんぽん))、明の許自昌(きょじしょう)の出版したもの(許本(きょほん))、清(しん)の黄晟(こうせい)が巾箱(きんそう)本(小型の本)として出版した黄氏巾箱本(黄本(こうほん))などが伝えられており、近年では、1959年に、北京(ペキン)の人民文学出版社が、談本を底本とし、許本、黄本を参考にし、それに明の沈弁之(しんべんし)の写本と清の陳鱣(ちんせん)の校本を参照して活字本を出版した。

[高橋 稔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太平広記」の意味・わかりやすい解説

太平広記
たいへいこうき
Tai-ping guang-ji

中国の小説集。宋の李 昉 (りぼう) らの編。 500巻。太平興国3 (978) 年成立。李 昉ら 13人が太宗の勅命によって正統な歴史にとられない古来の野史,小説その他の説話を集めた書。内容によって神仙,女仙,道術,方士以下 92の項目に分類,配列されている。引用された書は 475,なかには今日原書が失われて本書によってのみ伝わる書も多く,中国小説史研究上,最も基本的な資料となっている。なお成立直後に勅版が出されたが,あまり必要でない書とされてすぐ絶版になり,明に入って談 愷 (たんがい) が写本を入手して嘉靖 45 (1566) 年に校刻出版し,初めて世に流布した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「太平広記」の意味・わかりやすい解説

太平広記【たいへいこうき】

中国,宋代の類書。500巻,目録10巻。977年に李【ぼう】(りほう)らが勅を奉じて撰。漢より北宋初期までの説話を採取し,神仙・道術・異人・異僧など90余部に分類。中国小説史研究上の重要資料。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「太平広記」の解説

太平広記
たいへいこうき

宋の太宗の命で李昉 (りぼう) らが編修した説話集
978年に完成。500巻,目録10巻。漢から五代までの伝説・奇聞を集め,項目別に分類集成。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android