太政官(だいじょうかん)(読み)だいじょうかん

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

太政官(だいじょうかん)
だいじょうかん

律令(りつりょう)官制における中央・地方行政の最高機関。和訓ではオオイマツリゴトノツカサといい、日本独自の官制。しかしそのモデルは唐の最高の行政官庁である尚書省の都省であったため、尚書省・都省・鸞台(らんだい)ともいう。藤原仲麻呂(なかまろ)が官名を唐風に改めたときには乾政(けんせい)官と称した。官制上は神祇(じんぎ)をつかさどる神祇官に対し、行政全般をつかさどるのを任務としたが、実際には神祇官をも統轄下に置いていた。その範疇(はんちゅう)は、狭義には大臣から大納言(だいなごん)(のち令外官(りょうげのかん)である中納言・参議を含む)の議政官をさす例から、広義には八省を含む行政官全体を示す場合まで多様である。しかしその基本は、議政官組織とその秘書、事務局である少納言局、および行政実務の執行機関ともいうべき左右弁官局の3部局から成立しているとみるべきである。その成立時期はさだかではないが、浄御原(きよみはら)令制下にも存在したが大宝(たいほう)令制のそれとは異質であり、官制としては大宝律令で確立した。

 議政官は天皇の諮問に答え、勅や審議決定事項を弁官を通して、太政官符などを通じて執行させた。議政官は令前の大夫(まえつぎみ)制の伝統を引き継いだ有力氏族の代表者たちであり、その合議によって政務は進められたが、基本的には天皇権力を前提にその政治を補完する性格のものであった。9世紀初めに蔵人所(くろうどどころ)が成立してのち、徐々に形式化するが、平安時代でも、陣定(じんのさだめ)(仗議(じょうぎ)ともいい公卿(くぎょう)会議)で各種の政務が審議され、少納言局の政務を引き継いだ外記政(げきせい)や弁官局の政務を引き継いだ官政(かんせい)などでは中納言以上が上卿(しょうけい)として出席するなど、形式は変わるが太政官の機能は生き続けた。武家政権下では公家(くげ)の政務が形式化するに伴い、太政官も形骸(けいがい)化したが幕末まで続き、明治政府の太政官(だじょうかん)制に及んだ。

[佐藤宗諄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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