太陽観測衛星(読み)たいようかんそくえいせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「太陽観測衛星」の意味・わかりやすい解説

太陽観測衛星
たいようかんそくえいせい

太陽のさまざまな活動現象を宇宙空間から観測するために打ち上げられた人工衛星。太陽は地表からも観測できるが、地球大気によるゆらぎや吸収を避けるために宇宙からの観測が必要となる。また、宇宙からであれば、地球の自転による昼夜の影響もなく24時間継続的に観測できる。そして人工衛星の軌道によっては、地球からは観測できない太陽の極域も観測できるという利点もある。

 おもな太陽観測衛星は以下の通りである。

OSO(オソ)(Orbiting Solar Observatory) 1962年から1975年にわたりNASAアメリカ航空宇宙局)により複数回打ち上げられた。太陽の11年周期にわたり紫外線とX線で観測した。

ヘリオス(Helios) 1974年に打ち上げられたヘリオス1号と1976年に打ち上げられたヘリオス2号がある。西ドイツ(当時)とNASAにより計画・運用された。太陽を周回する軌道から太陽表面の活動、太陽風、太陽からの放射線を観測した。

ソーラー・マックス(Solar Max) 正式名はSolar Maximum Mission satellite。1980年にNASAにより太陽の活動周期を調査する目的で打ち上げられた。

ひのとり(ASTRO-A) 東京大学宇宙航空研究所(のちの宇宙科学研究所ISAS〉、現、宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部〈JAXA/ISAS〉)が開発した日本初の太陽観測衛星。1981年(昭和56)に打ち上げられ、太陽フレアをX線やガンマ線などで高精度に観測した。

ユリシーズ(Ulysses) 1990年にNASAとESA(ヨーロッパ宇宙機関)の共同で太陽の全緯度領域を調査するために打ち上げられた。木星を利用したスイングバイにより、太陽の南北極域を観測した。

ようこう(SOLAR-A) 日本のISAS、現在のJAXA/ISASによって開発された太陽観測衛星。1991年(平成3)に打ち上げられ、太陽の活動極大期に、X線およびガンマ線でフレア、黒点などを観測した。

SOHO(ソーホー)(Solar and Heliospheric Observatory) ESAと、NASAによって開発された太陽観測衛星。1995年に打ち上げられ、地球―太陽系のラグランジュL1点近傍に配備されている。彩層、遷移層、コロナなどの太陽表層部の観測とラグランジュL1点付近の太陽風の観測を行っている。NASAの探査機ACEと共同して、宇宙天気予報にも貢献している。

ACE(Advanced Composition Explorer) 太陽や銀河を起源とする高エネルギー粒子を実際の宇宙空間で調査するNASAの探査機。1997年に打ち上げられ、地球―太陽系のラグランジュL1点近傍に配備されている。太陽風や高エネルギー粒子を観測している。SOHOと共同して、宇宙天気予報にも貢献している。

TRACE(トレース)(Transition Region and Coronal Explorer) NASAの太陽観測衛星。1998年に打ち上げられ、白色および紫外線で太陽の光球、遷移層、コロナを観測している。

SORCE(Solar Radiation and Climate Experiment) NASAが2003年に打ち上げた、太陽からのX線、紫外線、可視光、近赤外線、合計放射量を測定する太陽観測衛星。

STEREO(ステレオ)(Solar TErrestrial RElations Observatory) NASAが2005年に打ち上げた太陽調査プロジェクト。2機の調査衛星を太陽軌道に乗せて、コロナガスの噴出(CME:coronal mass ejection)などを観測して太陽を立体的に調査している。

ひので(SOLAR-B) 日本の国立天文台NAOJ)とJAXA/ISASがアメリカのNASA、イギリスの素粒子物理天文学研究会議(PPARC:Particle Physics and Astronomy Research Council)と共同で開発した太陽観測衛星。2006年に打ち上げられ、コロナ加熱問題やフレア内部の爆発発生過程、磁場の微細構造の解明を目的としている。

SDO(Solar Dynamics Observatory) NASAが打ち上げた太陽観測衛星。2010年に打ち上げられ、太陽大気を高空間分解能と高時間分解能で多波長により観測して太陽の影響を調べている。

PICARD(ピカール) フランス国立宇宙研究センター(CNES:Centre national d'études spatiales)によって2010年に打ち上げられた太陽観測衛星。太陽光度と太陽直径の関係から太陽活動の地球気候への影響を探っている。

IRIS(アイリス)(Interface Region Imaging Spectrograph) NASAが2013年に打ち上げた太陽紫外線を観測する太陽観測衛星。太陽の境界面の詳細な観測により、コロナへの熱伝達の機構の解明に貢献している。

パーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe) NASAが打ち上げた太陽観測衛星。2018年に打ち上げられ、太陽の外部コロナを直接観測している。

ソーラー・オービター(Solar Orbiter:SolO) ESAの太陽観測衛星。2020年に打ち上げられ、地球からの観測が難しい太陽の極地方を詳細に観測することが目的。

[編集部 2023年12月14日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太陽観測衛星」の意味・わかりやすい解説

太陽観測衛星
たいようかんそくえいせい
Orbiting Solar Observatory; OSO

太陽の微細構造やその活動,太陽が放射するX線などを観測するためにアメリカが打上げた科学衛星。1号は 1962年3月7日高度約 580kmの円軌道に乗り,太陽表面の爆発現象などを観測した。続いて2号が1号とほぼ同じ軌道に乗り (1965.2.) ,3号は,6台の望遠鏡で太陽スペクトルの観測を行なった (67.3.) 。その後,8号 (75.6.) まで打上げられてそれぞれ軌道に乗った。

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