日本大百科全書(ニッポニカ) 「夫婦杯」の意味・わかりやすい解説
夫婦杯
めおとさかずき
男女が同じ杯の酒を飲み交わすことによって、夫婦の約束をすること。相杯(あいさかずき)、結び杯、固めの杯などともいう。日本古来の契約の作法であった。現代の婚礼の際に行われる三三九度の杯は、室町時代のころに小笠原(おがさわら)流などの礼式が形を整え、武家の作法として定着していたが、近世・近代に及んで庶民もこれを見習うようになった。長柄(ながえ)の銚子(ちょうし)を二つ用意し、それぞれの折紙飾りによって雄蝶(おちょう)・雌蝶(めちょう)に区別する。男女児を酌の係に頼むのが例で、そのためその男女児を雄蝶・雌蝶とよぶこともある。親類や近所の子供に頼むものであったが、現代の神式では神社の巫女(みこ)がつとめる。杯は三つ重ねのものを用い、夫婦が交互に飲む。自宅で婚礼をしていたころは、別室で近親者だけで、夫婦杯、兄弟杯、親子杯などを済ませ、それから座敷へ出て披露宴に臨むものが多かった。近来の結婚式場に、式場と宴会場を併設するのはそのためである。
[井之口章次]