女学者(読み)おんながくしゃ(英語表記)Les femmes savantes

改訂新版 世界大百科事典 「女学者」の意味・わかりやすい解説

女学者 (おんながくしゃ)
Les femmes savantes

モリエール作,韻文5幕,1672年初演。作者最後の本格喜劇で,主題は女性の浅薄な学問流行を批判するもの。舞台はパリの豊かな町人クリザールの家。亭主を尻に敷く猛妻アルマンド,義妹ベリーズ,長女アルマンドは,家事を軽蔑し,文芸・哲学・科学に熱中するが,次女アンリエットだけは堅実な常識の持主で,衒学者(げんがくしや)で三文詩人を婿に押し付けようとする母親に負けず,相思の青年と幸福な結末を迎える。風俗を描く“画家”と呼ばれたモリエールにふさわしく,上層ブルジョアジーの婦人たちが興味の対象とした学問の上っ調子の流行という当時の社会現象を切り取って,これに風刺を加えた大作。しかし,作中批判される女性たちの性格が生彩を放つのに比べ,首尾よく結ばれる若い男女にはつらつたる生気が乏しく,かえって作者の保守的町人道徳があらわになる結果となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「女学者」の意味・わかりやすい解説

女学者
おんながくしゃ
Les Femmes savantes

フランスの劇作家モリエールの韻文喜劇。5幕。 1672年3月 11日,パリのパレ=ロワイヤル座で初演。『才女気どり』 (1659) と同じく,当時ブルジョア階級にまで広がっていた女性の学問熱を風刺した作品。登場人物の巧みな性格の対比なかに,学問という幻想にしがみつく人々のおかしさが緊密な構成と文体で描きだされている。商人クリザールとその次女アンリエットは,初めモリエール夫妻が演じた。

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