女性文学(読み)じょせいぶんがく

知恵蔵 「女性文学」の解説

女性文学

戦後日本文学において、男性と同等の法的権利と教育環境とを手にした女性たちが、女性としての存在、身体性、関係性などを問い直す作業のなかから、独自の表現を模索していったのは、1960年代から70年代にかけてである。森茉莉、瀬戸内晴美(のち寂聴)、河野多恵子大庭みな子倉橋由美子富岡多恵子金井美恵子三枝和子津島佑子などが、男性作家主導の戦後文学の理念や方法への懐疑をバネに、新たな文学世界を開拓していった試みの成果は、男性中心主義の刻印を押された女流文学ではなく、まさに女性文学と呼び直されるにふさわしいものであった。こうした現代女性文学の原点は、与謝野晶子の「明星」や平塚らいてうの「青鞜」における、女性言説確立の試みにある。文学の不振が叫ばれだして久しい現代日本において、女性文学は安定した読者層を有し、着実な地歩を築きつつある。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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