奴隷制[東洋](読み)どれいせい[とうよう](英語表記)slavery

翻訳|slavery

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「奴隷制[東洋]」の意味・わかりやすい解説

奴隷制[東洋]
どれいせい[とうよう]
slavery

東アジアでは一般に,奴 (男) ・婢 (女) の語で奴隷を表わすが,その実態は時代,地域により異なる。社会身分として良民と賤民を区別する良賤制は東アジアの歴史を通じて広くみられるが,これを一種の奴隷制ととらえる考えがある。また専制的君主のもとでの臣民を奴隷的な存在とみなし,ある段階までの東アジア社会を総体的奴隷制とみる考えもある。一方,インド,中央アジア,西アジアには古代から典型的な奴隷の存在が広くみられ,それはイスラム時代を経て 20世紀初頭まで残存した。中世イスラム社会では,アフリカの黒人バルカンやロシアの白人,中央アジアのトルコ人などが奴隷商人によってもたらされ,取引された。奴隷は農場鉱山などで奴隷制に基づく労働に従事する場合もあったが,多くは家内奴隷で,解放される場合も多かった。また 11世紀頃からはマムルークグラームなどと呼ばれる奴隷出身の軍人集団が政治の実権を握る例がしばしば出てくる。オスマン帝国のイェニチェリもその例であるが,13~16世紀のエジプトマムルーク朝は奴隷出身軍人が代々の君主であった王朝である。

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