姫始(読み)ひめはじめ

精選版 日本国語大辞典 「姫始」の意味・読み・例文・類語

ひめ‐はじめ【姫始】

〘名〙 暦にいう語。暦の正月二日に記された日がらの名。種々の事柄をその年はじめて行なう日とされるが諸説がある。《季・新年》
① 糄𥻨飯(ひめいい)を食べはじめる日。
※伯家五代記‐忠富王記・明応一〇年(1501)正月一日「三献有之、次看経、次御こは、次比目始」
② (飛馬始めの意と解して) 馬に乗りはじめる日。
俳諧・増山の井(1663)正月「馬ののりそめ 飛馬(ヒメ)はしめ」
裁縫など婦女の業(わざ)をはじめる日。
※狂歌・万載狂歌集(1783)一「ひめはしめ暦家の説は何なりとすべて女の所作をいふなり」
④ その年初めて夫婦、男女が交合する日。
※俳諧・犬子集(1633)一一「口をひらいてわらふ正月 暦にもおくには見えぬ姫はしめ〈貞徳〉」

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改訂新版 世界大百科事典 「姫始」の意味・わかりやすい解説

姫始 (ひめはじめ)

江戸時代の暦に記されていた暦注の一つ。貞享暦など多くの暦には,吉書始,はかため(歯固め)などとともに,正月2日の欄にかなで〈ひめはしめ〉と注されていた。そのためこれに飛馬(ひめ)始め,火水(ひめ)始めなどの漢字をあて,馬の乗始め,火水の使始めなどと解するなど諸説が生じた。女伎始めとして女性が裁縫始めとする説や,男女がその年最初の交わりをなす日だとする説もある。とくにこの男女の秘事(ひめごと)を始める日という俗説が一般に通用し,江戸時代の文芸などにもしばしばとりあげられている。しかし,姫始は糄𥻨(ひめ)始め,すなわちハレの食品である強飯(こわめし)に対して,日常の柔らかい飯である姫飯(ひめいい)を食べ始める日と解するのが妥当と考えられている。
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