子供服(読み)こどもふく

精選版 日本国語大辞典 「子供服」の意味・読み・例文・類語

こども‐ふく【子供服】

〘名〙 子ども用の服。子どもが着る洋服
浅草紅団(1929‐30)〈川端康成〉五六「子供服(コドモフク)、新かんぺう〈略〉七月のある朝、私が見た仲見世露店だ」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「子供服」の意味・わかりやすい解説

子供服
こどもふく

子供用の衣服のこと。年齢範囲としてはだいたい3歳から12、13歳(ローティーン)までを対象としており、3歳以下はよちよち歩き用のトドラーベビー服があり、13、14歳以上はジュニア部門に入る。

[辻ますみ]

歴史

洋服

欧米の服装史のうえで、はっきり子供服とわかる衣服類が現れるのは18世紀末期であり、そう古いことではない。それ以前には子供用の衣服というものはなく、大人の服型をそっくりまねたものを着ていた。子供は原罪を負った存在であるから、早くその時期を逃れたほうがよい、という考え方が伝統的にあり、幼少から大人のように装い、大人のようにふるまうことが強要されてきた。また乳児期には、体を動かさぬようにスワドリング・バンドswaddling bandを全身に巻き付けて縛るという風習も、長く続けられていた。子供に対する考え方が変わらない限り、これらの風習は続くわけだが、それには、この考え方の非合理性を批判する、18世紀の啓蒙(けいもう)思想の普及をまたねばならなかった。とくにルソーの教育論の影響は大きく、子供の存在や人格が認められるとともに、それが子供の衣服にも反映されていった。19世紀前後の絵画に描かれる子供は、生き生きとして自然であり、衣装も子供らしくなってきている。男児はブラウスジャケットズボンの組合せやスケルトンスーツ(上下をボタンでつなぐスーツ)、女児は丈が短めのドレスにパンタルーンズ(ズボン)をはいたが、ステイズコルセット)を着ける習慣は続いており、シルエットはまだ大人の流行に影響されていた。また4、5歳までは男児もドレスを着て、女児と同じ服装をするのが一般的だった。

 学校教育に体操が取り入れられた20世紀初頭から、女児服も動きやすいシンプルなデザインに変わり、子供に関する多方面からの研究が活発になって、いわゆる子供の時代を迎えることになる。第一次世界大戦後は、すでに既製服産業が成長していたアメリカで、子供服の分野が確立され、世界的な影響力をもつようになった。現在では素材やデザインが吟味され、成長を妨げない、動きやすく安全な子供服が設計されている。既製服産業の発達した現在は、ジーンズやTシャツの登場により、子供服は実用衣料から高級品まで多種多様化し、婦人服同様ファッショナブルな商品も増えている。学童期の子供を含むこの分野では、あくまでも安全性と耐久性を考慮した安価な商品が望まれている。

 ベビー服には、肌を刺激せずしかも伸縮性のある素材が適し、着替えやすさや体の動かしやすさを考慮したデザインが望まれる。幼児や学童期は、男女差を意識し始め、好みも出てくる年齢だが、じょうぶで洗濯のきく素材を用いたベーシックな形の服が望ましく、しっかりした縫製と適切なサイズぞろえが必要である。

[辻ますみ]

和服

子供の和服は大人用のものと類似しており、長着、羽織、ちゃんちゃんこ、半纏(はんてん)、被布(ひふ)などがある。一つ身、三つ身、四つ身など年齢、体格に応じて用いられる。一般に少し大きめにつくり、肩揚げ、腰揚げをしておき、子供の成長にしたがって、裄(ゆき)、身丈(みたけ)を加減する。揚げによってかわいらしさを表現し、着くずれのしないように付け紐(ひも)をつける。子供のすこやかな成長を祈願して、宮参りや、七五三の祝いをする風習があり、祝い着を着る。

 古くは公家(くげ)服飾として、成人前の男・女児が着用した童形の童(わらわ)装束があり、近世まで用いられた。男児用には童直衣(のうし)、童狩衣(かりぎぬ)、細長(ほそなが)、童水干(すいかん)があり、皇族などの礼服には半尻(はんじり)が用いられ、武家では長絹(ちょうけん)を着た。女児用には汗衫(かざみ)、細長、衵(あこめ)などがある。子供は新陳代謝が盛んで、熱気が内にこもらぬよう、袖に振りをつけ、身八つ口をあけた。一般には小袖(こそで)形式で付け紐のあるものが用いられ、近世には日常着として、腹掛け姿がみられた。

[岡野和子]

『Phillis Cunnington & Anne BuckChildren's costume in England (1965, Adam & Charles Black, London)』『Elizabeth EwingHistory of Children's costume (1977, Batsford, London)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「子供服」の意味・わかりやすい解説

子供服
こどもふく

広義には子供用衣服の総称。0歳から満1歳までの乳幼児用のベビー服と,満1歳から 15歳までの狭義の子供服 (男児服,女児服,園児服,ティーンズウエアを含む) とに大別される。西洋では,古くは,子供はおとなの衣服を縮小した,形のうえでは大差のないものを着ていたが,独自の子供服は 18世紀末の自然主義や自由主義の勃興とともに出現した。

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