季語(読み)きご

精選版 日本国語大辞典 「季語」の意味・読み・例文・類語

き‐ご【季語】

〘名〙 連歌俳諧俳句で、四季それぞれの季節感を表わすために、句によみこむ語。季ことば。季のことば。四季のことば。季の題。季題
[補注]短歌雑誌「アカネ」で明治四一年(一九〇八)に大須賀乙字が用いたのが最初といわれる。

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デジタル大辞泉 「季語」の意味・読み・例文・類語

き‐ご【季語】

俳句で、季節と結びついて、その季節を表すと定められている語。連歌・俳諧では、季詞きことば、季のことば。四季の詞。季題。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「季語」の意味・わかりやすい解説

季語
きご

俳句、俳諧(はいかい)、連歌のなかの季節を表すことば。「春風」(春)、「夕立」(夏)、「紅葉(もみじ)」(秋)、「雪」(冬)などの類。古くは単に季、あるいは季の詞(ことば)、四季の詞といった。「季題」と同じ意味に用いられるが、とくに俳句の場合に限って「季題」といい、俳諧、連歌の付句(つけく)の場合に「季語」といって、区別することもある。近年の俳句では「季語」といわれることが多い。季語は日本文学の長い歴史のなかで、しだいに成熟し、増加してきた。季語はこの国における風土と感情の特徴をよく表しており、ただ俳句のためだけのものでなく、広く日本文化を考えるうえでの鍵(かぎ)ともなるような語群を形成している。季語の総体が大きな文化的産物であるともいえる。

 あることばが一定の季節を表すという考えは、すでに平安時代の歌人の間にもみられ、『能因歌枕(うたまくら)』には12か月に分けて約150の季節を表すことばが収められている。南北朝時代から室町時代にかけての連歌の発句(ほっく)において、季語はなくてはならないものと考えられるようになり、付句においても季語の働きが注目された。里村紹巴(じょうは)の連歌論書『連歌至宝抄』(1627)には約270の季語がみられる。江戸時代になって、俳諧が成立すると、季語はますます重要視され、庶民的な生活感覚を反映して、新しい季語も増え、季語を集めた「季寄せ」「歳時記」の類も多く出版されるようになった。江戸初期の北村季吟の『山之井』(1648)は約1300の季語を収めるが、同後期の曲亭馬琴(ばきん)著・藍亭青藍(らんていせいらん)増訂『俳諧歳時記栞草(しおりぐさ)』(1851)では約3300の季語を集めている。現代の歳時記は4000数百の季語を収めているのが普通である。近代俳句の革新者正岡子規(まさおかしき)は、季語の実感を重んじ、季語のもつ連想内容の豊富さが俳句にとって有益であると考えた。それを受け継ぐ高浜虚子(きょし)は、日本の風土的・民族的性格をよく表すものとして季語を重んじた。

[山下一海]

『飴山実他著『季題入門』(有斐閣新書)』

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改訂新版 世界大百科事典 「季語」の意味・わかりやすい解説

季語 (きご)

一定の季節と結びつけられて,連歌,俳諧,俳句で用いられる語を季語(または季題)という。少数の語の季語化は,《古今和歌集》以下の勅撰和歌集でなされていたが,季語化の意識が強くなったのは,四季の句をちりばめて成立する連歌においてである。連歌の季語化は,和歌によって培われた情趣にもとづき,季語としての内容(本意(ほい))を確定するものであった。〈春の日も事によりて短き事も御入候へども如何にも永々しきやうに〉(紹巴《至宝抄》)受けとることにより,〈春の日〉という季語の本意が決まったのである。連歌の一体として発生しながらも,江戸時代に独自の展開をした俳諧では,季語がいちじるしく増大する。1641年刊の《誹諧初学抄》では約600語だった季語が,幕末の《俳諧歳時記栞草》(1851)では3000を軽く超えている。和歌,連歌の季語は,貴族の自然観や人生観に根ざしていたが,俳諧においては,〈売初(うりぞめ)〉〈麦蒔(むぎまく)〉(《誹諧初学抄》)のように町人,農民などのことばが数多く季語化されたのである。短詩である俳句の流行した明治以降は,季語は作品と読者をつなぐ紐帯として重んじられ,さらに増加を続けている。たとえば〈春一番〉は1960年代に定着した新しい季語である。季語は,季節(四季)による世界の分節化・秩序化であり,各季語の来歴は,日本人の感覚と思考の軌跡だといってよいだろう。コラム参照
歳時記
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世界大百科事典(旧版)内の季語の言及

【挨拶】より

…その上で,状況に応じて称賛・卑下などの寓意を託することもある。俳句に季語をよみこむのは,その名ごりであるが,近代の独詠は脇を予想しない。それに対して,連句時代の発句のもつ対詠的性格を広く挨拶とよぶこともある。…

【季題】より

…連歌,俳諧や近代俳句で,句に詠みこむ季節感をもつ特定の語を,古くは〈四季の詞〉〈季の詞〉などといったが,明治末年以後,俳句に用いる四季の詞について,季題という語が用いられて一般化した。季語が広く連歌,俳諧の付句に用いる四季の詞までを含んで用いられるのに対して,俳句(発句)の季語を意味することが多い。早く和歌では勅撰集などで四季の部立が行われ,題詠の風も一般化し,季節の景物を詠むことが行われて,季節の詞が諷詠の題となった。…

【詩語】より

…また〈歌枕〉は名所として人々の憧憬を刺激する地名だが,地名をいうだけで人々の共同的想像力をかきたてえた点で,重要な詩的装置であり,古典的なpoetic dictionの好例といえるものであった。さらに重要なものとして,《万葉集》《古今和歌集》以後,連歌・俳諧の長い歴史的経過を通じ,きわめて精緻に体系化され,現代の俳句歳時記に集大成されている〈季題〉〈季語〉の一大宝庫がある。季題とは四季それぞれの歌を詠むに当たって,その季節を一語よく象徴しうるごとき題を詠題として立てた万葉や古今以来の分類法にもとづく用語である。…

※「季語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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