宇沢弘文(読み)ウザワヒロフミ

デジタル大辞泉 「宇沢弘文」の意味・読み・例文・類語

うざわ‐ひろふみ〔ウざは‐〕【宇沢弘文】

[1928~2014]経済学者。鳥取の生まれ。東京大学数学を学んだのち経済学に転じる。理論経済学分野功績があり、また公共経済学立場から環境問題や種々の社会問題にも取り組んだ。文化勲章受章。著「自動車社会的費用」「『豊かな社会』の貧しさ」など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宇沢弘文」の意味・わかりやすい解説

宇沢弘文
うざわひろふみ

[生]1928.7.21. 鳥取
[没]2014.9.18. 東京
理論経済学者。1951年東京大学理学部数学科卒業。大学院で学んだあと,生命保険会社に入社したが経済学に転じ,1956年アメリカ合衆国に渡った。スタンフォード大学経済学部研究員を経て,同大学准教授,カリフォルニア大学准教授を務め,その間の 1962年博士号を取得。1964年シカゴ大学教授に就任。1968年に帰国,1969年に東京大学経済学部教授に就任。1976年国際学会のエコノメトリック・ソサエティー会長に就任。1989年に東京大学を定年退官後,新潟大学,中央大学の教授を務めた。同 1989年理論計量経済学会会長に就任。2003~08年同志社大学社会的共通資本研究センターのセンター長を務めた。数理計画法,ミクロ理論,マクロ理論,公共経済学を柱に理論経済学(→数理経済学)のほぼ全領域にわたる研究を行ない,アメリカにおける初期の研究では先進的な数理的手法を駆使する新古典派理論(→新古典派総合)の旗手として世界的に注目された。その後しだいに新古典派に対し懐疑的となり,帰国後は批判の声をさらに強めた。理論経済学,環境経済学の分野で先駆的な業績を残す一方,現代日本のさまざまな社会問題を通して,日本経済・社会に警世を鳴らした。1970年代の『価格理論』『経済発展変動』『自動車の社会的費用』『近代経済学の再検討──批判的展望』,1990年代以降の『「成田」とは何か──戦後日本の悲劇』『地球温暖化を考える』など幅広い著作がある。1983年文化功労者に選ばれ,1997年文化勲章を受章した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宇沢弘文」の意味・わかりやすい解説

宇沢弘文
うざわひろふみ
(1928―2014)

理論経済学者。鳥取県米子(よなご)市生まれ。1951年(昭和26)東京大学理学部数学科を卒業ののち、経済学に転じる。一般均衡理論を中心とするミクロ経済学、経済成長理論を中心とするマクロ経済学の研究で国際的に知られる。1960年代にはアメリカのスタンフォード大学、シカゴ大学で教鞭(きょうべん)をとった。1968年から1989年(平成1)の定年退官まで東京大学経済学部教授、その後新潟大学教授、中央大学教授を歴任。この間1976年(昭和51)には理論経済学の国際的学会であるエコノメトリック・ソサエティーの会長を務めた。学問的関心は狭義の経済理論だけでなく、「社会的共通資本」という概念を基に環境問題などにも及ぶ。1974年に刊行された『自動車の社会的費用』は大きな衝撃を与えた。著書のタイトル『「豊かな社会」の貧しさ』が象徴するように、多様な社会問題に対して積極的な発言を行う行動的学者でもある。1983年文化功労者となる。1997年文化勲章受章。

[吉川 洋]

『『宇沢弘文著作集』全12巻(1994~1995・岩波書店)』

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百科事典マイペディア 「宇沢弘文」の意味・わかりやすい解説

宇沢弘文【うざわひろふみ】

経済学者。鳥取県米子市出身。1951年,東京大学数学科卒業。1956年渡米,スタンフォード大,カリフォルニア大の助教授をへて,1964年,シカゴ大教授。1969年,東大教授。経済と社会との関係を批判的に再検討して近代経済学の限界を問い続ける。理論経済学の分野で優れた業績を残した。新古典派の成長理論を数学的に定式化。消費財と投資財の働きを中心に経済成長のメカニズムを説明する〈宇沢モデル〉は多くの経済学者によって引用され,その後の研究に大きな影響を与えたが,次第に市場原理主義のアメリカ経済学から遠ざかった。経済学の対象を,自然環境や医療,福祉,教育などで構成する社会的共通資本に広げ,その理論的探究にとりくんだ。著作に《自動車の社会的費用,1974年(岩波新書)》,《近代経済学の再検討,1977年(岩波新書)》,《社会的共通資本,2000年(岩波新書)》など多数。1983年文化功労者,1997年文化勲章受章。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「宇沢弘文」の解説

宇沢弘文 うざわ-ひろふみ

1928-2014 昭和後期-平成時代の経済学者。
昭和3年7月21日生まれ。シカゴ大教授などをへて,昭和44年母校東大の教授。のち新潟大,中央大教授,同志社大社会的共通資本研究センター長。最適成長理論の提唱など理論経済学ですぐれた業績をのこす。また公共経済学の立場から,「社会的共通資本」としての教育制度や地球環境問題などにとりくむ。58年文化功労者。平成元年学士院会員。9年文化勲章。21年ブループラネット賞。平成26年9月18日死去。86歳。鳥取県出身。著作に「自動車の社会的費用」「近代経済学の再検討」など。

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