安来市(読み)ヤスギシ

デジタル大辞泉 「安来市」の意味・読み・例文・類語

やすぎ‐し【安来市】

安来

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日本歴史地名大系 「安来市」の解説

安来市
やすぎし

面積:一二〇・七八平方キロ

県の東端に位置し、東は鳥取県米子市、西は八束やつか郡東出雲町・能義のぎ広瀬ひろせ町、南は同郡伯太はくた町に接し、北は中海に臨む。東西一三・七五キロ、南北一三キロでほぼ菱形をなし、中国山地の北側に源を発し、中海にそそぐ飯梨いいなし川・伯太川の二河川のデルタを中心に発達している。おもな交通路は近世の山陰道と並行する国道九号が東西に通り、主要地方道安来―伯太―日南にちなん線、同安来―木次きすき線が南北に走る。JR山陰本線は国道九号に並行し、同九号と同じく米子市と松江市を結ぶ。中心街の安来町には安来港がある。地名安来は「出雲国風土記」に意宇おう郡の郷名としてみえ、「神須佐乃袁命、天の壁立ち廻り坐しき。爾の時、此処に来坐して詔りたまひしく、「吾が御心は安平やすけく成りましぬ」と詔りたまひき。故、安来と云ふ」という地名起源説話が記されている。

〔原始〕

当市域は県内でも有数の遺跡集中地域として知られるが、それらは弥生時代中期後半以降の遺跡がほとんどで、それ以前のものはあまり知られていない。現在のところもっとも古い遺物は意多岐おだき神社の境内から出土したと伝えられる旧石器時代末期の尖頭器であるが、搬入品の可能性が指摘されている。縄文時代の遺跡は高広たかひろ遺跡・島田黒谷しまたくろたにI遺跡などで前期中葉から後期の土器がややまとまって出土している程度である。当市域の低地では近世の鉄穴流しなどによって当時の地形が埋没してしまったため、現在では古い時代の遺跡が確認できないものと思われる。弥生中期後半から終末にかけては、丘陵上で竪穴住居を中心とした集落が多く現れている。これらに先立つ集落が丘陵上で確認されていないことを考えると、この頃に集落地を丘陵上に移さなければならないような社会的な状況があったと想像できる。また弥生後期には鍵尾かぎお遺跡(墳丘墓)長曾ちようそ土壙墓群・仲仙寺ちゆうせんじ墳墓群・宮山みややま墳墓群などが造られるようになる。この背景には生産の拡大と集落の発展があったと考えられる。

古墳時代前期には西部の荒島あらしま丘陵上に造山つくりやま古墳群・大成おおなり古墳など主体部に長大な竪穴式石室を設けた古墳が集中して造られている。これら初期の古墳はいずれも方墳で、前方後円墳が含まれていないことが最大の特徴である。造山三号墳・大成古墳からは中国製鏡などが出土している。このように県内で大型の前期古墳がまとまっている地域は安来市以外にはない。なお最近発見された塩津しおつ一号墳(方墳)は弥生墳丘墓の伝統を残した古墳として注目される。

安来市
やすぎし

2004年10月1日:安来市と能義郡伯太町・広瀬町が合併
【伯太町】島根県:能義郡
【広瀬町】島根県:能義郡
【安来市】島根県

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安来市」の意味・わかりやすい解説

安来〔市〕
やすぎ

島根県東部,中海南岸にある市。1954年安来町と飯梨村,赤江村,荒島村,島田村,大塚村の 5村が合体して市制。2004年10月に広瀬町,伯太町と合体し新生安来市となった。江戸時代には山陰道宿場町松江藩の外港として繁栄。米の集散地として知られた。広瀬地区は松江藩の支藩松平氏の城下町として発展,広瀬絣の生産技術の保存がはかられている。伯太地区の母里は支藩の陣屋が置かれたところで,母里焼が特産である。背後に砂鉄産地を控え,早くから刃物の製造が発達し,多くの刀匠が輩出。明治中期に近代的金属工場が立地し,今日も鉄鋼,金属製品の生産が多い。たけのこ,果樹の栽培のほか酪農も行なわれる。岩舟古墳,造山古墳で知られる荒島古墳群,仲仙寺古墳群安来一里塚などは国の史跡。「安来節」の発祥地としても知られ,製鉄に関する和鋼博物館がある。国指定史跡の富田城跡鷺ノ湯温泉,重要文化財を多く所蔵する清水寺があり,付近は清水月山県立自然公園に属する。JR山陰本線,国道9号線が通じる。面積 420.93km2。人口 3万7062(2020)。

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