安治川(読み)あじかわ

精選版 日本国語大辞典 「安治川」の意味・読み・例文・類語

あじ‐かわ アヂかは【安治川】

大阪市西部、中之島西端から南西流して大阪湾に注ぐ旧淀川の称。貞享元~四年(一六八四‐八七河村瑞軒が開削し、新川と名づけた。現在は内港としての役割が大きい。延長約七キロメートル。

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デジタル大辞泉 「安治川」の意味・読み・例文・類語

あじ‐がわ〔あぢがは〕【安治川】

淀川よどがわ分流の一。大阪市中之島から南流して大阪湾に注ぐ。貞享年間(1684~1688)河村瑞軒ずいけんが開削した運河

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日本歴史地名大系 「安治川」の解説

安治川
あじがわ

旧淀川本流の最下流の部分名称。堂島どうじま川と土佐堀とさぼり川の合流点から南西に直進して大阪湾に注ぐまでをいい、約七キロ。貞享元年(一六八四)河村瑞賢が淀川治水のため開削した。長さは一五町、幅は四〇間(延享版「難波丸綱目」)。長さ千丈、幅三〇丈ともいう(大阪市史)。安治川開削前の淀川本流は、堂島川土佐堀川合流後尻無しりなし川を分流し、九条くじよう(現西区・此花区)の北を南西から北西湾曲流し、六軒屋ろつけんや川を分流したのち南・北の伝法でんぽう川に分流する直前の中津川に合流していた(明暦元年大坂三郷町絵図)。瑞賢はこの曲流部分を野田のだ(現福島区)南部の砂洲と九条島を開削して直線化し、六軒屋川につないだもので、これにより流れは直線流することになった。当初はしん川・新堀しんほり川とよばれたが、元禄一一年(一六九八)幕命により安治川と改称された(大阪市史)

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改訂新版 世界大百科事典 「安治川」の意味・わかりやすい解説

安治川 (あじかわ)

淀川下流のうち,大阪市中之島西方の堂島川と土佐堀川の合流地点から大阪湾に注ぐまでをいう。下流は大阪港の中心地区をなし,各種の港湾施設と倉庫,工場が集中する。江戸時代初期の淀川下流は流路が複雑で,土砂によって三角州が成長し,その新田開発が進むに伴い河道が延長し,河口がふさがり舟運に障害が起こった。このため幕命を受けた河村瑞賢は,1684年(貞享1)九条島に新川を切り開いて淀川の水を一直線に海に導く改修工事を行った。この新川がのちに安治川と名付けられたが,この工事以後,諸船は伝法川を経ないで市中に入れるようになり,この川筋が諸国からの大坂入港のコースとして繁栄することとなった。明治以後の安治川河口では,南岸側は大阪港としての整備が進み,北岸側では市内では最も早く臨海工業地区が形成されて今日に至っている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「安治川」の意味・わかりやすい解説

安治川
あじかわ

大阪市内を北東から南西に貫流する旧淀川(よどがわ)下流の一分流。北区中之島西端から大阪湾に至る延長6.34キロメートル、幅員158メートル。うち下流部約2キロメートルは安治川内港で幅員500メートル。1684年(貞享1)幕命を受けた河村瑞賢(ずいけん)が治水対策として、当時蛇行する淀川下流の九条島(くじょうじま)を開削してつくった人工河川である。開削以来治水のみならず水運にも寄与し、商都浪華(なにわ)の繁栄をもたらした。その間、河底の土砂の浚渫(しゅんせつ)がたびたび行われ、その盛り土で波除山(なみよけやま)や天保山(てんぽうざん)が築かれた(跡地は公園化)。1868年(明治1)大阪開港に際しこの川筋に川口波止場、同運上所(税関)が設けられたが、やがて大阪湾頭の大阪港築造に伴い、同港と市街地を結ぶ水路として重視された。第二次世界大戦後は大阪港の復興事業として、各河川下流の内港計画が進められ、安治川内港ができた。現在、右岸に大阪中央卸売市場のほか、住友化学、日本製鉄などの大工場、左岸には倉庫群、穀物貯蔵サイロなどが立地し、安治川大橋で結ばれている。

[位野木壽一]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安治川」の意味・わかりやすい解説

安治川
あじがわ

大阪市内を流れる旧淀川の分流の1つ。中之島の西端から大阪港に注ぐまでをさす。淀川の洪水を防ぐため貞享4 (1687) 年,河村瑞賢 (ずいけん) が九条島を開削して造成。淀川舟運の大動脈となった。その浚渫 (しゅんせつ) でできたのが天保山 (てんぽうざん) である。明治1 (1868) 年大阪開港,さらに 1903年大阪築港に伴い,川筋は物資輸送の機帆船往来が盛んになり,沿岸には倉庫,荷揚げ場,造船所などの立地をみた。第2次世界大戦後,下流 2kmの間が川幅 500mに拡幅され,安治川内港が設けられた。現在,左岸の安治川埠頭には上屋,倉庫,サイロ,国際見本市会場などが整い,外国交易港区となっている。右岸には造船,車両,機械などの大工場が立地。弁天埠頭は瀬戸内海航路のターミナル。

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事典 日本の地域遺産 「安治川」の解説

安治川

(大阪府大阪市西区川口2、福島区野田1~港区弁天6、此花区西九条7地先)
大阪市都市景観資源」指定の地域遺産。

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世界大百科事典(旧版)内の安治川の言及

【大阪[市]】より

… 元禄期の発展によって,大坂市中は拡大した(図)。貞享年間(1684‐88)河村瑞軒が淀川筋を改修し安治川の開削をおこなったが,それをきっかけに元禄・宝永期に堂島,安治川や堀江,曾根崎の各新地ができた。ついで享保以降にも高津,難波の両新地ができた。…

※「安治川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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