安祥寺(読み)あんじょうじ

精選版 日本国語大辞典 「安祥寺」の意味・読み・例文・類語

あんじょう‐じ アンジャウ‥【安祥寺】

京都市山科区御陵(みささぎ)平林町にある高野山真言宗別格本山。山号は吉祥山入唐八家(にっとうはっけ)の一人、恵運が嘉祥元年(八四八)創建。東密事相の根本道場となり、安祥寺流を開いたが、応仁の乱で荒廃した。高野堂

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デジタル大辞泉 「安祥寺」の意味・読み・例文・類語

あんじょう‐じ〔アンジヤウ‐〕【安祥寺】

京都市山科区にある高野山真言宗の寺。山号は吉祥山。嘉祥元年(848)仁明天皇の皇后藤原順子発願により建立。開山は恵運小野流の根本道場として興隆したが、戦国時代の兵火により衰えた。

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日本歴史地名大系 「安祥寺」の解説

安祥寺
あんしようじ

[現在地名]山科区御陵平林町

安祥寺山南東麓にある。吉祥山と号し、高野山真言宗。仁明天皇の女御藤原順子が建立、開基は恵運。

〈京都・山城寺院神社大事典〉

〔開創〕

開創は嘉祥元年(八四八)(「一代要記」ほか)、仁寿元年(八五一)(貞観一三年「安祥寺伽藍縁起資材帳」東寺文書)、仁寿二年(濫觴記)、仁寿年中(貞観元年四月一八日「太政官符」類聚三代格)などの諸説がある。「文徳実録」斉衡二年(八五五)六月一日条に「詔、以安祥寺於定額、施稲一千束、以充灯油」とみえ、定額寺となったが、翌年一〇月二一日条には「以山城国宇治郡粟田山入安祥寺」とある。施入された粟田あわた山は安祥寺伽藍縁起資材帳に「山五十町、四至東限大樫大谷 南限山陵 西限堺峰 北限檜尾古寺所在山城国宇治郡余戸郷北方、安祥寺上寺在其裏、建立已後経九箇年、至斉衡三年歳次丙子冬十月、太皇太后宮買上件山、施入於安祥寺」と記される広大なものである。

〔寺基の確立と寺領〕

以後寺勢は拡大、貞観元年(八五九)には年分度者三人が定められ、新薬師寺(現奈良市)弘福ぐふく(現奈良県明日香町)、大和法隆寺、崇福すうふく(現滋賀県大津市)と同じく維摩会・最勝会竪義の列に入り、寺の基礎が固まった(前掲貞観元年四月一八日太政官符)

安祥寺
あんしようじ

[現在地名]奈義町西原

西原にしばら集落東部にある真言宗東寺派寺院。大(台)照山と号し、本尊薬師如来。「東作誌」によると本寺は西北条さいほくじよう香々美かがみ(現苫田郡鏡野町)円通えんつう寺。由緒によると行基が当地藤尾ふじお山に伽藍を造営したことに始まるという。伝えでは元弘年中(一三三一―三四)広橋局が後醍醐天皇を慕って隠岐に向かうが美作で妊娠九ヵ月になり、菅家一族の守護のもとで大内皇子を産む。産所もうヶ谷といい、そこから三町ほど奥に山城御子屋敷を設けた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「安祥寺」の意味・わかりやすい解説

安祥寺
あんしょうじ

京都市山科(やましな)区御陵(みささぎ)平林町にある高野山(こうやさん)真言宗の寺。「あんじょうじ」ともよぶ。吉祥山と号す。848年(嘉祥1)淳和(じゅんな)太后の寿算を祝うため創建したもので、建立本願主は仁明(にんみょう)天皇の皇后藤原順子であり、入唐(にっとう)僧恵運(えうん)を開基とする。11世宗意(1074―1148)のころは寺運大いに興隆し、安祥寺流をおこして事相(じそう)(密教の行法(ぎょうぼう)上の作法面)において小野三流の随一寺院となり、法を授け伝えた。しかし、戦国時代に兵乱にあい、また豊臣(とよとみ)秀吉の命に従わなかったため禄(ろく)を没収されて衰え、さらに明治の廃仏棄釈により、堂塔は荒廃し、寺宝は散逸した。現在、寺宝には本尊十一面観音、五智如来(ごちにょらい)(国の重要文化財)、地蔵菩薩(じぞうぼさつ)がある。

[野村全宏]

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改訂新版 世界大百科事典 「安祥寺」の意味・わかりやすい解説

安祥寺 (あんしょうじ)

京都市山科区にある高野山真言宗の寺。山号は吉祥山。俗に高野堂(こうやどう)。848年(嘉祥1),仁明天皇の女御の藤原順子の所願により,入唐僧の恵運が創建。はじめ安祥寺山の山上と山下に伽藍が整備されたが,上寺は早く廃絶し,現地の下寺のみが法灯を伝えて今日に残る。855年(斉衡2)定額寺指定,856年寺領粟田山の施入など,朝廷や公家の厚い保護が続き,平安時代に栄えた。中世から真言小野三流の随一,世に安祥寺派といわれ,門跡寺院になる。だが,応仁の乱の兵火にかかって荒廃し,近世に復興して寺観をややととのえた。木像の五智如来座像5軀は,創建当初の貞観仏とされて重要文化財。安祥寺山中に上寺の遺跡も残る。
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