安達太良山(読み)あだたらやま

精選版 日本国語大辞典 「安達太良山」の意味・読み・例文・類語

あだたら‐やま【安達太良山】

福島県中北部の円錐火山。主峰の安達太良山(一七〇〇メートル)、最高峰箕輪(みのわ)山(一七二八メートル)などから成る。江戸末期から明治中期までしばしば噴火。ふもとに、岳(だけ)、中沢、沼尻などの温泉がある。磐梯朝日国立公園の一部。安達太郎(あだちたろう)山。

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デジタル大辞泉 「安達太良山」の意味・読み・例文・類語

あだたら‐やま【安達太良山】

福島県中北部の火山。標高1700メートル。麓にだけなど温泉が多い。

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日本歴史地名大系 「安達太良山」の解説

安達太良山
あだたらやま

〔範囲と名称〕

狭義には標高一六九九・六メートルの安達太良山(乳首山・甑明神)をさすが、広義にはこれを主峰として連なる連山の総称。箕輪みのわ(一七一八・五メートル)鬼面きめん(一四八一・六メートル)くろがね(一七〇九・三メートル)船明神ふねみようじん(一六四一・二メートル)和尚おしよう(一六〇一・七メートル)薬師やくし(一〇九二メートル)まえヶ岳(一三四〇メートル)などがおもな山名である。狭義の安達太良山山頂は郡山市に属する。連峰とその裾は二本松市・安達郡大玉おおたま村・郡山市・福島市・耶麻郡猪苗代町にまたがる。古代には「安達嶺」(日本紀略)・「安太多良の嶺」(万葉集)などとよばれていたようであるが、元禄六年(一六九三)の文書(大玉村史)や大玉村の相応そうおう寺の記録(相応寺蔵)に「岳山」、「松府来歴金華鈔」では「安達太良岳」、「相生集」には「安達太良山」とある。「安達郡誌」は「俗二本松岳、西岳、安達岳、安達太良峰、岳山又大華ともいへり」と記す。「万葉集」巻一四に「安太多良の嶺に臥す鹿猪ししのありつつも吾は到らむ寝処な去りそね」「陸奥の安太多良真弓弾き置きてらしめきなば弦着つらはかめかも」とみえる。巻七には「陸奥の安太多良真弓弦着けて引かばか人の吾を言なさむ」とある。

〔歴史と信仰〕

「日本紀略」寛平九年(八九七)九月七日条に「授陸奥国坐正六位上飯豊別神、安達嶺禰宜大刀自神、安達嶺飯津売神並正五位上、従五位下小陽日温泉神正五位下」とみえるのが山名と神名の初見。これによると正六位上の飯豊別神である安達嶺の禰宜大刀自神と飯津売神は正五位上を授けられ、従五位下の小陽日温泉神は正五位下を授けられている。

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改訂新版 世界大百科事典 「安達太良山」の意味・わかりやすい解説

安達太良山 (あだたらやま)

福島県のほぼ中央に位置する円錐状の火山。標高1700m。安達太郎山とも書くが,これは〈安達地方第1の山〉の意。東および南東麓の二本松市や本宮(もとみや)地方では乳首山または岳山,南西麓の猪苗代地方では沼尻山または硫黄山とも呼んでいる。安達太良山は鬼面山(1482m),箕輪山(1719m)とともに一つの火山群を形成し,その北方に位置する吾妻火山群(吾妻山)とは土湯峠で境されている。安達太良山には鉄山,矢筈森,船明神山などの外輪山によって囲まれた直径約500mの沼ノ平火口があり,西方の沼尻方面に大きく口を開いている。1900年の大爆発では,沼ノ平に長径300m,短径150m,深さ40mの新しい爆裂火口がつくられた。ここからの水は西方に火口瀬をつくり,沼尻川となって流下するが,途中溶岩の絶壁を落下して比高50mの白糸ノ滝を形成する。この爆発では火山灰や岩石片を吹きとばしただけで,溶岩の流出はなかったが,沼ノ平北東隅の硫黄製錬所は跡かたもなく吹きとび,82名が死傷した。

 50年に指定された磐梯朝日国立公園の東部に位置し,山腹はカラマツ,ブナ,ダケカンバなどの林や各種の高山植物が豊富である。山麓には国民温泉の岳温泉をはじめ,塩沢,野地,鷲倉,横向,沼尻,中ノ沢など数多くの保養向きの温泉があり,これらの温泉は安達太良山への登山基地ともなる。また,岳,横向,沼尻の各温泉は冬季スキー客でにぎわう。《万葉集》巻十四に〈安太多良の嶺に臥す鹿猪(しし)のありつつも吾は到らむ寝処な去りそね〉とあるのをはじめ,高村光太郎の《智恵子抄》や宮本百合子の《播州平野》などにも登場する。
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百科事典マイペディア 「安達太良山」の意味・わかりやすい解説

安達太良山【あだたらやま】

福島県北部,奥羽山脈中にあり,那須火山列に属する。標高1700m。切頭円錐形の成層火山で,山頂に西壁の欠けた火口があり,火口湖になっている。山体は花コウ岩,変成岩,第三紀層を基盤とし,安山岩からなる。《万葉集》に安太多良の嶺とみえ,江戸時代には岳山などとも記される。磐梯朝日国立公園に属し,山麓の(だけ),沼尻などの温泉が登山口。山頂直下に湧くくろがね温泉付近では現在も火山ガスの発生が認められ,気象庁が常時観測する活火山となっている。
→関連項目安達[町]猪苗代[町]高玉鉱山日本百名山二本松[市]福島[県]福島[市]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安達太良山」の意味・わかりやすい解説

安達太良山
あだたらやま

福島県北部,那須火山帯に属する火山活火山で,常時観測火山。別称は二本松地方では岳山,猪苗代地方では沼尻山,または硫黄山。標高 1709m。円錐形の成層火山で山頂は数峰に分かれる。山体は花崗岩変成岩安山岩からなる。旧火口底は沼の平と呼ぶ平坦地であったが,1900年大爆発して硫黄採掘者に多くの死者を出した。以降大きな噴火は見られないが,火山活動は続いており,1997年には火山ガスの噴出で死者が出た。山腹に岳温泉沼尻温泉中ノ沢温泉,横向温泉などがあり,またスキー場もあって観光客でにぎわう。ヤエハクサンシャクナゲの群落,湯川渓谷の紅葉は美観。岳温泉,沼尻温泉などの登山口でもある。磐梯朝日国立公園に属する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「安達太良山」の意味・わかりやすい解説

安達太良山
あだたらさん

福島県中北部にある安山岩質の活火山。東側の二本松市などでは岳山(だけやま)、西側の猪苗代(いなわしろ)町では沼尻山(ぬまじりやま)とも称す。南北に続く和尚(おしょう)山(1602メートル)、主峰の安達太良山(1700メートル)、鉄(てつ)山(1709メートル)、箕輪(みのわ)山(1728メートル)、鬼面(きめん)山(1482メートル)などの諸峰の総称。有史以後の噴火は、鉄山の西側の沼の平火口(直径1キロメートル余、深さ約150メートル)での1899~1900年(明治32~33)の水蒸気爆発である。とくに1900年7月の大爆発では、火口内の硫黄(いおう)鉱山の従業員83人中、死者72、負傷者10人を数え、西側火口壁を破って硫黄川が流出した。沼尻温泉の湯元も火口付近にある。磐梯朝日(ばんだいあさひ)国立公園に含まれ、四季を通じ一般登山者にも容易に登れる。西側の沼尻、中ノ沢両温泉、東側の岳(だけ)温泉、北側の野地温泉などが登山基地で、冬は絶好のスキー場になる。高村光太郎の詩集『智恵子抄(ちえこしょう)』に「阿多多羅山(あたたらやま)」と歌われている。福島地方気象台が常時火山観測中である。

[諏訪 彰]


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事典・日本の観光資源 「安達太良山」の解説

安達太良山

(福島県)
日本百名山」指定の観光名所。

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