定期船不定期船(読み)ていきせんふていきせん

改訂新版 世界大百科事典 「定期船不定期船」の意味・わかりやすい解説

定期船・不定期船 (ていきせんふていきせん)

あらかじめ公表された運賃と運航スケジュールに従って特定航路に就航する船舶を定期船(ライナーliner)と呼び,荷主の求めに応じてどの航路にでも随時就航する船舶を不定期船(トランパーtramper)と呼ぶ。

 海上貿易貨物輸送需要はそれぞれ異質な内容を示すが,これらが海運サービスに求める要求の内容は大きく二つに分けられる。製品,半製品,生鮮食料品,高額商品などは,重量または容積に比べて単位当り価格が高いことから,その取得価格に占める運賃の割合が小さく,そのため運賃負担力が大きい。しかもこれら商品は,商機を逸しないで第三者に売却しなければならないか,またはその他の理由により,迅速にして安全な輸送と,特定航路における定期的かつ頻繁な輸送サービスを強く求める。このような貨物の個別輸送需要は貿易取引単位を反映して非常に小口であるが,需要の発生場所と流れが一定し,安定的かつ継続的な荷動き量を示す。したがって,このような需要内容の小口雑貨物を集合することによって,特定航路で規則的な輸送サービスの提供が可能となる。この種の海上貿易貨物を対象に,運航スケジュールと品目別の運賃表(タリフ)を公表し,これに基づいて特定航路で定期的に反復航海する船舶の運航形態を定期運航といい,これに従事する船舶を定期船と呼んでいる。

 一方,原材料燃料食糧,その他の低額物資は,重量または容積に比べて単位当り価格が低いことから,その取得価格に占める運賃の割合が大きく,そのため運賃負担力が小さい。この種の貨物は,輸送サービスを求めるに当たっては低運賃輸送を最も強く要求し,輸送サービスの規則性や迅速性をほとんど問題としない。これらの貨物は概して個別取引の単位が大きく,一荷満載の大量輸送が可能であるが,輸送需要の流れが断続的であり,しかもこれらの貿易取引はより安い取得価格を求めてしばしば供給地を変えるので,その場所的・時間的現れ方が不規則かつ不安定である。したがって,こうした輸送需要を対象に運送活動を行う船舶は,必然的に需要発生の時間的順序にしたがって,随時,航路を変更して不定期に航海することになる。このような運航形態をふつう不定期運航といい,この不定期運航形態で乾貨物を輸送する船舶を不定期船,また液体貨物を輸送する船舶をタンカーとそれぞれ呼んでいる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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