家畜法定伝染病(読み)カチクホウテイデンセンビョウ

デジタル大辞泉 「家畜法定伝染病」の意味・読み・例文・類語

かちく‐ほうていでんせんびょう〔‐ハフテイデンセンビヤウ〕【家畜法定伝染病】

家畜伝染病

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「家畜法定伝染病」の意味・わかりやすい解説

家畜法定伝染病
かちくほうていでんせんびょう

家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)によって定められた伝染病をいう。集団的に家畜飼育を行おうとするとき、もっとも困るのが、動物の病気が人間に感染すること、次に動物相互に感染することである。このため国では家畜伝染病予防法を規定し、伝染病の蔓延(まんえん)を防ぐように配慮している。現在、26種類が定められ、家畜の法定伝染病とよばれている。

 家畜で、法定伝染病にかかっている(患畜)か、かかっている疑いのあるもの(疑似患畜)を発見した獣医師は、定められた手続で、すみやかに都道府県知事に届け出なければならない。患畜または疑似患畜発見の通報を受けた家畜防疫員は、届け出に従って、ウシウマ、またはブタなどについて、一定期間の移動を禁止したり、隔離したり、該当する家畜を殺処分するように、所有者に命じることがある。また、必要があれば、これらの動物の死体を剖検し、病性の鑑定をし、疑似患畜をも殺処分させることができる。法定伝染病と診断された、または疑いのある患畜の死体は、省令の基準に従って焼却または埋却し、他へ伝播(でんぱ)しないように処分しなくてはならない。なお、家畜伝染病予防法では、1997年(平成9)より家畜法定伝染病と家畜法定伝染病に準じる届出伝染病(71種類)をまとめて「監視伝染病」とよび、新興再興感染症等、病性の不明な疾病を「新疾病」として、ともに獣医師が発生を発見した場合には届け出なければならない。

 一方、外国からの動物またはその死体、骨、肉、卵など、または皮毛類およびその容器に至るまで、輸入時に検疫を受け、輸入検疫証明書の交付を受けなければならないように定められている。日本では、国内の伝染病の防疫、または外国からの病畜の輸入などにおける検疫(動物検疫)はきわめて厳重に配慮されているため、法定伝染病の侵入、伝播はほぼ防圧されている。

 また、家畜の法定伝染病には、人間に感染するもの(人獣共通感染症)があり、狂犬病のように特別の法律(狂犬病予防法)によって、予防液の定期注射を義務づけて、完全防圧を図っているものもある。

[本好茂一]

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百科事典マイペディア 「家畜法定伝染病」の意味・わかりやすい解説

家畜法定伝染病【かちくほうていでんせんびょう】

家畜伝染病予防法第2条に規定されている下記の25種の伝染病。その発生の際は,畜主および診断した獣医師は,直ちに市町村長に報告し,家畜防疫員の指示に従わねばならない。牛疫,牛肺疫,口蹄(こうてい)疫,流行性感冒,流行性脳炎,狂犬病炭疽(たんそ),気腫疽,出血性敗血症ブルセラ症,結核病,ヨーネ病,ピロプラズマ病,アナプラズマ病,鼻疽馬伝染性貧血豚コレラ,アフリカ豚コレラ,豚水疱病,豚丹毒,家禽(かきん)コレラ,家禽ペスト,ニューカッスル病,ひな白痢および腐蛆(ふそ)病(ミツバチ)。なお,犬の狂犬病については別に〈狂犬病予防法〉を定めている。
→関連項目ウイルス病検疫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「家畜法定伝染病」の意味・わかりやすい解説

家畜法定伝染病
かちくほうていでんせんびょう

家畜伝染病予防法に規定されている 28種の家畜伝染病。広義には,家畜伝染病予防法と家畜伝染病予防法施行規則により定められている 71種の家畜届出伝染病も含む。(1) ウシを主体とする伝染病 ブルセラ病(→ブルセラ症)と結核病は,細菌性の疾患で,ともに人畜共通伝染病であるため徹底した防疫策がとられ,発生率は低い。炭疽は土壌病といわれ,敗血症を伴う細菌性の疾患で致死率が高い。放牧牛などに集団的に発生する傾向がみられる。(2) ブタを主体とする伝染病 豚コレラは,全身症状,発熱,下痢を伴うウイルス性の疾患で,致死率はきわめて高い。(3) ニワトリを主体とする伝染病 ニューカッスル病は,全身症状を伴うウイルス性の急性疾患で,予防には不活性ワクチン,生ワクチンが有効。家禽サルモネラ感染症の一つの雛白痢(→白痢)は,介卵伝染による細菌性の白色下痢,敗血症を伴う幼雛の急性疾患。保菌鳥の検診による摘発淘汰が進み,発生率は低い。(→狂犬病口蹄疫鳥インフルエンザ

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改訂新版 世界大百科事典 「家畜法定伝染病」の意味・わかりやすい解説

家畜法定伝染病 (かちくほうていでんせんびょう)

〈家畜伝染病予防法〉により指定された伝染病。この法律は家畜の伝染病の発生の予防とそのまんえんを防止し,畜産の振興をはかる目的で施行されているが,この第2条に家畜の伝染病25種類が定められている(表)。これを法定伝染病と呼び,その伝染病にかかっているか,かかっている疑いのあることが発見されたときはこれを診断し,またはその死体を検案した獣医師は,定めに従って管轄する市町村長に届け出なければならない。またこれらの伝染病の疑いのある病畜はすみやかに隔離しなくてはならず,病気のまんえんを防ぐため,市町村長は当該家畜の移動の禁止をはかり,殺さなくてはならない場合もある。

 イヌの狂犬病については,別に〈狂犬病予防法〉を定めており,イヌの狂犬病に限ってこの法律の適用をきめている。しかし厚生大臣は,イヌ,ウシ,ウマ,メンヨウ,ヤギ,ブタ,ニワトリ,アヒル以外の動物に狂犬病が発生して公衆衛生に重大な影響があるときは,動物の種類,期間および地域を指定してこの法律の一部準用ができるとしている。
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