寄口(読み)キコウ

デジタル大辞泉 「寄口」の意味・読み・例文・類語

き‐こう【寄口】

律令制戸籍で、他戸の戸籍に編入された者。寄人よりゅうど。よせく。よりく。

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精選版 日本国語大辞典 「寄口」の意味・読み・例文・類語

よせ‐くち【寄口】

〘名〙
① 攻め寄せてくる方面。攻め口。
武家名目抄(19C中か)軍事部「波岡よりの寄口を堅固に守れと被仰付
滑稽本浮世床(1813‐23)二「梓の弓のよせ口(クチ)に、ひかれ誘はれ、冥加はなけれど倚来たはいのう」

き‐こう【寄口】

〘名〙 令制の戸籍で、戸を構成する単位一つ一戸の戸籍の中で戸主直系親族傍系親族および奴婢ほか、戸主と続柄の明らかでない者の称。寄口・寄人(きにん)・寄などと注されている。個人であることもあるが、多く家族を構成している。よりこう。よりく。
正倉院文書‐大宝二年(702)筑前国嶋郡川辺里戸籍「建部麻呂 年肆拾伍歳、正丁 寄口」

より‐こう【寄口】

〘名〙 令制の戸籍で、戸を構成する単位の一つ。一戸の戸籍の中で戸主の直系親族、傍系親族および奴婢のほか、戸主と続柄の明らかでない者の称。寄口・寄人(きにん)・寄などと注されている。個人であることもあるが、多くは家族を構成している。きこう。よりく。

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改訂新版 世界大百科事典 「寄口」の意味・わかりやすい解説

寄口 (きこう)

日本古代の戸籍計帳における戸主との関係表示のひとつ。〈寄人〉〈寄〉あるいは何も書かれていないものも,同じ性質であると考えられている。戸主との続柄がいっさい表示されず〈寄口〉とのみ記されるものであるが,戸主と同姓のものも異姓のものもあり,また戸主のそれよりも大きい家族をなしているものもあれば,個人の例もあって,その性格規定をめぐって学説対立がみられる。だいたいにおいて,戸籍・計帳が家族構成の実態を示しているとする論者は,寄口の隷属的性格を強調し,とくに異姓寄口を中心として家内奴隷制への傾向を認めようとするのに対して,戸籍・計帳に表現されたものが法的擬制であるとする論者は,その隷属的性格について否定的であり,編戸にあたって50戸1里制に規定されて,遠縁者などを同一戸内にあわせねばならぬところから生じる表示上の問題にすぎぬとして,〈郷戸・房戸〉の制度と関連させて考えようとする。
古代家族論
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「寄口」の意味・わかりやすい解説

寄口
きこう

奈良時代の戸籍・計帳において、戸主との血縁関係が当時の親族称呼では表せない場合につけられた一種の続柄(つづきがら)用語。「寄人」とも書く。古代戸籍の親族称呼は「いとこ」(=「同党」「従父兄・弟」「従父姉・妹」)までしかないため、これより遠い親族者や非血縁者は「寄口」「寄人」と表示するか、なにも続柄を書かずに近い親族者のあとに列記している。寄口の階層性について、寄口はすべて良民が没落したもので奴隷的存在であるとする見方が行われているが、寄口には戸主の遠い親族で、しかも家族的まとまりをもった者がかなり含まれており、このような寄口は同一戸内の共同生活者か、独立した家族が便宜上編付されたものとみたほうがよいようである。

[平田耿二]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「寄口」の解説

寄口
きこう

寄・寄人(きにん)とも。古代の戸籍に記載された,戸主との続柄注記のない戸口。単身者や破片的家族だけでなく,傍系親を含むものや妾をもつものもある。その性格については,戸主との同姓・異姓の別も手がかりとしつつ,(1)戸主を家長とする家父長制家族の従属的労働力,(2)戸を人為的画一的に編成するため便宜的に編付されただけで階層差とはかかわらない,(3)父系的な続柄記載の原則からはみでた女系親族,とみる諸説が対立している。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「寄口」の意味・わかりやすい解説

寄口
きこう

「よりく」「よせく」とも読む。日本の律令制時代に,没落した自由民が,個人または家族ぐるみで,同姓または異姓の戸籍に組入れられ,寄住者の形態をとったもの。古代の郷戸 (ごうこ) の重要な労働源となったと思われ,その隷属性は次第に増していった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「寄口」の解説

寄口
きこう

律令制下,戸籍にみえる寄留人
寄人 (よりゆうど) ともいう。個人や家族全員が,同姓または異姓の戸籍に編入された者。同族や縁者・非血縁者など雑多である。発生については没落した戸や家族が,富裕な戸に寄住したというが不明。

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