富士浅間物(読み)ふじあさまもの

改訂新版 世界大百科事典 「富士浅間物」の意味・わかりやすい解説

富士浅間物 (ふじあさまもの)

人形浄瑠璃・歌舞伎脚本の一系統。題材は能の《富士太鼓》。管絃の役の争いから楽人浅間に殺された富士の妻が,敵は太鼓であると,太鼓を打って恨みを慰めるのが主題。浄瑠璃では1733年(享保18)7月豊竹座の並木宗輔作《莠伶人吾妻雛形(ふたばれいじんあづまのひながた)》が有名で,これは義太夫正本《弱法師(よろぼし)》の筋と合わせた作品。49年(寛延2)4月竹本座の竹田出雲作《粟島譜嫁入雛形(あわしまけいずよめいりひながた)》はその改訂版。83年(天明3)10月の松貫四(まつかんし)作《内(うち)百番富士太鼓》は珍しく江戸の肥前座初演である。歌舞伎では1758年(宝暦8)3月江戸市村座の壕越二三治(ほりこしにそうじ)作《恋染隅田川(こいぞめすみだがわ)》や,73年(安永2)7月中村座の中村重助作《傾城片岡山(けいせいかたおかやま)》などが古く,上方では1808年(文化5)8月大坂角の芝居の奈河七五三助(ながわしめすけ)作《復讐高根鼓(かたきうちたかねのたいこ)》が決定版的な作品として知られ,その後もいくつかの作品が登場したが,現在はほとんど上演されない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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