精選版 日本国語大辞典 「寛」の意味・読み・例文・類語
くつろ・ぐ【寛】
[1] 〘自ガ五(四)〙
① かたくしまっているものや、きっちりはまっているものなどが、ゆるむ。ゆるくなる。くずれる。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「上臈も乱れて、かうぶりの額、すこしくつろぎたり」
※俳諧・類船集(1676)由「揺(ゆるぐ)〈略〉つき山に立たる石も土龍(うごろもち)のほればくつろげり」
※源氏(1001‐14頃)澪標「数さだまりて、くつろぐ所もなかりければ」
③ ゆったりとした気分や状態になる。心が休まる。安心する。
※古今著聞集(1254)一二「夜もやすくもねず、昼も心うちくつろぐ事なし」
※中華若木詩抄(1520頃)中「鶯の声も寒き間は、渋て思ふほどは出ざるが、次第に暖になるに随て、くつろいで、笙歌のわき出るやうなぞ」
④ 危篤状態から脱して小康状態になる。
※御湯殿上日記‐延徳二年(1490)一二月三日「昨日より御みやくいささかくつろくよし申」
⑤ からだを楽にする。休息する。また、服装、姿勢、態度などを楽にする。
※虎明本狂言・三本柱(室町末‐近世初)「『こちもちとゆさんをせうぞ』『おんでもなひ事、いづれくつろがずはなるまひ』」
※大津順吉(1912)〈志賀直哉〉四「若し私が少しでもくつろいだ姿勢に変れたら」
⑥ うちとけて人に接する。
※幸若・いるか(室町末‐近世初)「入鹿はおもき人なれども、いもにははやくくつろぎ」
[2] 〘他ガ四〙 余地を作る。席を空け、ゆるやかにする。緊張をといて楽にさせる。
※枕(10C終)三三「はじめゐたる人々もすこしうち身じろぎ、くつろい、高座のもとちかきはしらもとにすゑつれば」
[3] 〘他ガ下二〙 ⇒くつろげる(寛)
くつろぎ【寛】
〘名〙 (動詞「くつろぐ(寛)」の連用形の名詞化)
① かたくしまっているものや、きつくはまっているものなどがゆるむこと。また、そのゆるみや隙間。
※教言卿記‐応永一二年(1405)一〇月一二日「車輪のつひうつ、又よこかみのくつろきくさひなほす」
② のびのびとすること。ゆったりとした気分や状態になること。休息すること。また、ゆとりを持つこと。また、そういう気分、状態。
※応永本論語抄(1420)子路第一三「言必信行必果さんと堅く執て、ちともくつろきのなき体は」
③ 納得すること。
※王子神社文書‐明応七年(1498)三月一六日・紀伊粉河寺東村頼母子講掟「たのもしの衆中のくつろきなく候ては、くそくうるへからす候」
④ (「窕」とも書く。橋掛りに行くことが、くつろぐような形になるところから) 能楽の特殊演出の一つ。舞の形の一つで、早舞(はやまい)の途中、橋掛りに行って休息すること。
くつろ・げる【寛】
〘他ガ下一〙 くつろ・ぐ 〘他ガ下二〙
① かたくしまっているものや、きっちりはまっているものなどをゆるやかにする。ゆるめる。広げる。
※今昔(1120頃か)二九「木を以て貝の口を差入れてければ、少し恌(くつろげ)たれば」
※雑俳・歌羅衣(1834‐44)四「襟元を先づくつろげる月見乳母」
② 気分をゆったりとさせる。安心させる。休息させる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※断橋(1911)〈岩野泡鳴〉一〇「馬上八里の疲れを湯に這入ってくつろげてから」
かん クヮン【寛】
〘名〙 (形動)
① 他に対する態度がゆるやかなこと。きびしくないこと。また、そのさま。
※別天地(1903)〈国木田独歩〉下「戦時ゆゑ艦内の諸規律は却て幾分か寛(クヮン)にして安らかに」 〔易経‐乾卦〕
② ゆったりと広いさま。〔慶応再版英和対訳辞書(1867)〕
ゆた【寛】
〘形動〙 空間や気持に余裕があってゆったりしているさま。のんびりしたさま。ゆっくりと落ち着いているさま。
※万葉(8C後)一一・二三六七「海原の路に乗りてや吾が恋ひ居らむ 大船の由多爾(ユタニ)あるらむ人の児ゆゑに」
※良寛歌(1835頃)「墨染のわが衣手のゆたならばうき世の民におほはましものを」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報