寮歌(読み)りょうか

精選版 日本国語大辞典 「寮歌」の意味・読み・例文・類語

りょう‐か レウ‥【寮歌】

〘名〙 学生歌一つ旧制大学高等学校専門学校寄宿寮で生活する学生生徒が、それぞれの寮でともにうたうために作られた歌。明治中期に始まり、一高の「嗚呼玉杯に花うけて」など有名なものは流行歌となる。
※学生時代(1918)〈久米正雄鉄拳制裁「窓の所に倚りかかって、寮歌を唱ったり」

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デジタル大辞泉 「寮歌」の意味・読み・例文・類語

りょう‐か〔レウ‐〕【寮歌】

寄宿寮で生活する学生・生徒がともに歌うために作られた歌。一高の「嗚呼玉杯ああぎょくはいに花うけて」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「寮歌」の意味・わかりやすい解説

寮歌 (りょうか)

旧制高等学校大学予科,旧制大学などの寄宿寮において学生・生徒たちが歌った唱歌校歌,応援歌などとともに学生歌の一部をなす。しかし,それらの間の区別は定かでなく,寮歌が実質上校歌の代りとなった例や,運動部歌や記念祭歌などが寮歌となった例などがある。寮歌の中ではとくに旧制高等学校のものが代表的であり,総計約2400曲にのぼると推計されている。旧制高校寄宿寮の起源は明治20年代はじめの第一高等中学校(第一高等学校の前身)にさかのぼることができるが,最も古い寮歌は1892年に作られた《雪ふらばふれ ふらばふれ》(落合直文作詞)である。その後95年以降,寮開設記念祭ごとに新しい寮歌が作られはじめた。とくに第一高等学校の寮自治制度が定着し,高等学校が大学予備教育機関としての性格をいっそう強くもちはじめた明治30年代には,名曲,名歌が輩出した。《アムール河の流血や》《春爛漫の花の色》(以上,1901),《嗚呼玉杯に花うけて》(1902)などは後世まで同校で歌いつがれたばかりでなく,明治後期から各地の高校,私学などに寮歌,学生歌を作る気運をおこした。なかでも第三高等学校の《紅萌ゆる丘の花》(1904),北大予科の《都ぞ弥生》(1912)などは,全国学生・生徒の愛唱歌となっていった。これらの明治30年代以降の寮歌は,学生・生徒たち自身の作詞・作曲によるものが大部分であったが,なかにはたとえば大学に進学した先輩など外部の人によって作詞・作曲された寄贈歌も少なくなく,《武夫原頭に》(第五高等学校),《慕南歌》(高知高校)など著名なものもある。寮歌の歌詞七五調の新詩体を基礎として青年の理想・希望を歌ったが,明治期には憂国・慨世を表す漢文書下し調のものも多く,大正・昭和期に入ると和文系の美文調のものも少なくなかった。旋律は西洋音楽の影響をうけた唱歌調のものであり,陽気さを表すために長調で作曲されたものが多いが,実際には哀調を表すために短調で歌唱されることも少なくなかった。寮歌は,少数の男子学生がエリート主義的な雰囲気のもとで青春の気概・情念を歌いこむという性格をもっており,寮生活を基盤としていた。第2次大戦後,学生生活が変化し寄宿寮の性格も変わったため,学園からは姿を消したが,青春歌謡として歌いつがれるものもあり,日本歌謡史においては貴重な文化財ということができる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「寮歌」の意味・わかりやすい解説

寮歌
りょうか

学生歌の一種で、校歌や応援歌と重複するものもある。旧制高等学校、大学予科、旧制大学など往年のエリートクラスの気分をたたえた、リズミカルで、それでいて哀調を帯びた旋律を特徴とし、歌詞は漢詩風のもの、大和(やまと)風のものなど、いずれも青春を謳歌(おうか)する類が圧倒的に多い。しばしば、身体動作を伴ったり、たき火を囲んで感傷的な気分で歌われる。よく知られているものに、第一高等学校の『アムール川の流血や』(1901)、『春爛漫(らんまん)の花の色』(1901)、『鳴呼(ああ)玉杯に花うけて』(1902)、第三高等学校の逍遙(しょうよう)歌『紅萌(くれないも)ゆる丘(おか)の花』(1904)、北海道帝国大学予科の『都ぞ弥生(やよい)』(1912)などがある。なお「日本寮歌祭」は、日本寮歌振興会主催で1961年(昭和36)10月に第1回を開催、以後毎年東京で開かれている。

[山口 修]

『旧制高校寮歌保存会編・刊『寮歌は生きている』(1966)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「寮歌」の意味・わかりやすい解説

寮歌
りょうか

旧制の高等学校や専門学校,大学の寄宿寮で生徒,学生が歌った唱歌。旧制高校では原則として寮生活をするたてまえがあり,この寮生活のなかで各学校,寮ごとに毎年の記念祭に生徒たちの作詞,作曲による新作が発表されるようになった。歌詞は一般に青年の夢や理想をうたい上げ,曲は単調で斉唱,高吟に適するものが多い。『ああ玉杯に花うけて』 (第一高等学校) ,『紅萌ゆる岡の花』 (第三高等学校) や『都ぞ弥生』 (北海道大学予科) などが有名。

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世界大百科事典(旧版)内の寮歌の言及

【学生歌】より

…もっともその第3歌は大学受験ラジオ講座のテーマ音楽として日本ではポピュラーになったが,新入生が先輩に奉仕を強いられた過去の因襲を想起させるためであろうか,現代の学生歌集には見当たらないようである。【新井 皓士】
[日本]
 校歌,寮歌,応援歌そして《デカンショ節》や《チャカホイ節》等,学生間の俗謡を学生歌といい,集団への帰属意識を鼓吹する形で歌われることが多い。寮歌がその代表で,1892年の第一高等中学校寮歌《雪ふらばふれ/ふらばふれ》(落合直文作詞,《月と花とは昔より》の替歌)がその最初である。…

【校歌】より

…おもに学校が制定を企画し,同窓生,学生,教職員などが作詞・作曲する場合が多いが,ときには学校に縁のある有識者,作曲家に依頼して作る場合もあり,また,同窓会が寄贈する場合もある。公式に制定された校歌のほかに,寮歌,応援歌などもあり,それらが公式の校歌に準ずるものとして歌われる場合も少なくない。このようにみると,寮歌や応援歌も広義の校歌の一種である。…

※「寮歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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