寺谷用水(読み)てらだにようすい

日本歴史地名大系 「寺谷用水」の解説

寺谷用水
てらだにようすい

天竜川下流用水の左岸導水路の磐田用水を豊岡とよおか村の神増かんぞ分水工から分水し、天竜川左岸の豊岡村・磐田市・豊田とよだ町・竜洋りゆうよう町へと南流する農業用水。天正一六年(一五八八)徳川家康の代官頭のひとり伊奈忠次の命を受けた加茂かも(現豊田町)の土豪平野三郎右衛門重定(繁定)により創設された。重定は寺谷村地内に長さ一二間・横二間二尺・高さ六尺二寸の戸なしの大圦(枠堰)を設けて天竜川の水を引入れ、同所より遠州灘沿岸の浜部はまべ村まで三里余の大井堀を掘り、高二万石余が井組役高に定められた(寛政元年「寺谷用水由緒書上」浜松市立中央図書館蔵)。慶長七年(一六〇二)重定は寺谷井堰の管理を命じられ、加茂匂坂さぎさか等の代官職となった(寛政重修諸家譜)。用水取水口は七年目ごとに伏替えられていたが、天竜川の満水、川瀬の移動、井堰普請、川除普請等に伴い、寺谷村以北の上野部かみのべ村・下野部村・壱貫地いつかんじ村・上神増かみかんぞ村・下神増村・平松ひらまつ村・掛下かけした(現豊岡村)などの間を転々と移動した。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の寺谷用水の言及

【遠江国】より

… 近世の農村では大河川下流域の新田開発が進展したが,それには灌漑用水の整備が不可欠であった。1588年(天正16)に創設された寺谷用水は天竜川の一支流を開削したもので,これによって磐田郡一帯73ヵ村の用水が整備されたといわれている。また浜松地方には,文化年間(1804‐18)に井組21ヵ村によって作られた下飯田用水組合などがある。…

※「寺谷用水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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