小倭郷一揆(読み)おやまとごういっき

改訂新版 世界大百科事典 「小倭郷一揆」の意味・わかりやすい解説

小倭郷一揆 (おやまとごういっき)

戦国期の約100年間,伊勢国小倭郷(現,三重県津市西部)にみられた地侍衆の一揆結合。1494年(明応3)当地の出身者天台宗真盛上人により成願寺が建立されたのを機に,地侍衆46名は一揆契状を作成し,白山神社に拠って互い結束をはかった。この一揆が注目される点は2点ある。第1はほぼ同時に作成された百姓衆起請文との比較から,全郷的な地侍一揆の下に近世の村規模単位の農民的結合〈百姓衆〉の存在が確認されることと,また一揆は百姓衆の支配を強化する目的で,結成されたことがわかる点。第2の特色は一揆が〈此方嘉例之徳政〉といわれる郷内独自の私徳政をもっており,それを管掌する〈徳政衆〉という機構をも備えていた点である。中世社会に広く在地固有の徳政が存在することを証明するうえで最も基本的な史料を提供してくれる一揆である。なお関係史料は成願寺文書として伝存している。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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