小浜(市)(読み)おばま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「小浜(市)」の意味・わかりやすい解説

小浜(市)
おばま

福井県西部にある市。若狭(わかさ)湾中央の小浜湾に臨み、北川、南川の三角州上に立地する商工業都市。1951年(昭和26)小浜町と内外海(うちとみ)、松永国富遠敷(おにゅう)、今富(いまとみ)、口名田(くちなた)、中名田の7村が合併して市制施行。1955年宮川、加斗(かと)の2村を編入。JR小浜線が通じ、国道27号、162号が走り、市内で交差し、舞鶴若狭自動車道(まいづるわかさじどうしゃどう)の小浜と小浜西の二つのインターチェンジがある。また、久須夜(くすや)ヶ岳へはエンゼルラインがある。面積233.11平方キロメートル、人口2万8991(2020)。

[印牧邦雄・島田正彦]

歴史

東部の府中に国府跡、国分国分寺跡があり、付近には多くの荘園(しょうえん)も営まれて、古代から若狭国の中心であった。鎌倉末期においてすでに小浜は日本海屈指の要港となっていたが、それは自然の良港であったばかりでなく、京都に至る捷路(しょうろ)(近道)があったからである。小浜から近江(おうみ)、京都方面への運送品は、日本海各地の荘園からの年貢米のみでなく、日本海産の塩、四十物(あいもの)(干魚、塩魚類)などがあり、これらの物資の多くは、小浜から熊川(くまがわ)(若狭町)を経て今津(滋賀県高島市)に至る九里半街道を通って運送された。

 室町時代に若狭の守護に封ぜられた武田氏は、初め西津を本拠とし、戦国時代には現市街南西の後瀬(のちせ)山の要害に拠(よ)った。1600年(慶長5)京極高次(きょうごくたかつぐ)が小浜藩主となり、翌1601年北川と南川に挟まれた雲浜(うんぴん)に小浜城を築いた。1634年(寛永11)酒井忠勝(さかいただかつ)が入部してから大いに修築を加え、本丸には江戸城富士見櫓(やぐら)を模した3層の天守閣をもつ平城(ひらじろ)を完成させた。城下町は、城を挟んで川の南北につくられ、東部にはおもに武家屋敷、西部には町屋を置き、人口は約1万4000人で、譜代(ふだい)大名の名門酒井家11万石の城下町にふさわしいにぎわいをみせていた。

 戦国時代から江戸初期にかけて北国(ほっこく)海運が発達すると、宇須岸(うすけし)(函館(はこだて))との間に毎年3回の商船の往来があり、蝦夷昆布(えぞこんぶ)が小浜に運ばれて加工され、若狭昆布の名で諸国に販売されるなど小浜の商況は最盛期を迎えたが、西廻(にしまわり)航路の完成によって大坂に直送されるようになると、入港量はかなり減少し、1918年(大正7)湾岸域に鉄道が開通してからは海運は衰え、それからは漁港、観光都市として発展している。

[印牧邦雄・島田正彦]

産業

伝統の若狭塗、めのう細工と漁業のほか目だった産業はなかったが、1960年ごろから労働力に引かれて市街周辺に電気機器、縫製業が立地している。旧河道を利用した港は第3種漁港となり、田烏(たがらす)の巾着(きんちゃく)網(明治中期にアメリカから導入して以来続く日本最古のもの)と、付近の定置網の漁獲物を集散した。しかし、ここは蘇洞門(そとも)への観光船も発着して狭いため、湾内を埋め立てたほか、港の整備が1988年に完成し、魚市場が移転している。北の内外海半島の堅海(かつみ)には県の栽培漁業センターが、隣接する泊(とまり)には国立研究開発法人水産研究・教育機構の日本海区水産研究所小浜庁舎があり、各種水産生物の種苗生産を試みている。

[印牧邦雄・島田正彦]

文化

地理的に京都に近く、したがって文化の発達も古く、かつ兵火の災いも少なかったので史跡、文化財が豊富なことで知られる。また当地は文化財の保存もよく「海のある奈良」とよばれている。神社では、若狭一宮(いちのみや)である若狭彦神社、若狭姫神社、寺院では若狭お水送りで知られる神宮寺、本堂・三重塔が国宝に指定されている明通寺(みょうつうじ)、国指定重要文化財をもつ円照寺(えんしょうじ)、多田寺、萬徳寺、羽賀(はが)寺、妙楽寺、国分寺、長源寺、高成(こうじょう)寺などのほか、酒井家の菩提寺(ぼだいじ)で八百比丘尼入定洞(はっぴゃくびくににゅうじょうどう)のある空印寺(くういんじ)が有名。東大寺二月堂の御水取に用いる若狭井の水源である鵜の瀬(うのせ)、景勝地蘇洞門(国指定名勝)、小浜城跡、小浜公園、蒼島(あおしま)(暖地性植物群落、国指定天然記念物)などの観光地もある。郷土芸能には、県指定無形民俗文化財の雲浜獅子(うんぴんじし)や手杵祭(てぎねまつり)が知られる。

[印牧邦雄・島田正彦]

『『小浜市史』(1971~1998・小浜市)』


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