小鼓(読み)コツヅミ

デジタル大辞泉 「小鼓」の意味・読み・例文・類語

こ‐つづみ【小鼓】

打楽器の一。鼓の小型のもの。能や長唄の囃子はやしなどに用いる。右肩にのせ、左手で調べ緒を持って右手で打つ。小胴こどう

しょう‐こ〔セウ‐〕【小鼓】

小さなつづみ。こつづみ。

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精選版 日本国語大辞典 「小鼓」の意味・読み・例文・類語

こ‐つづみ【小鼓】

〘名〙
① 小さいつづみ。能楽や長唄の囃子(はやし)に用いる。右肩にのせ、左で調緒(しらべお)を持ち、しめたりゆるめたりして調子をとりながら、右手で打つ。単に鼓といえば小鼓をさすことが多い。小(しょう)。小胴。⇔大鼓(おおつづみ)
古事談(1212‐15頃)一「有殿上人田楽〈略〉蔵人盛家 小鼓」
仮名草子犬枕(1606頃)「なりさうでならぬ物〈略〉新皮(あらかわ)のこつづみ」
② (①を打ち歩くところから) 「まんざい(万歳)」の異称
※雑俳・川傍柳(1780‐83)二「序が小鞁で大詰が暦也」

しょう‐こ セウ‥【小鼓】

〘名〙 小さいつづみ。こつづみ。
西大寺資財流記帳‐宝亀一一年(780)一二月二五日「小皷五面」 〔新唐書‐儀衛志下〕

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改訂新版 世界大百科事典 「小鼓」の意味・わかりやすい解説

小鼓 (こつづみ)

日本の打楽器。能,狂言や歌舞伎囃子では大鼓と対で用いられる。馬皮を鉄輪に張った表革・裏革計2枚の6個の調べ穴に,調緒(しらべお)(麻紐)の縦調べを通して革を胴にあて,多少のゆとりを持たせて締める。つぎに縦調べとほぼ直角に横調べを巻いて結ぶ。革の縁から裏にかけて黒漆を塗り,補強と装飾をかねる。胴(筒とも書く)は桜材で,中央が細くくびれている。調べを左手で握って右肩にかつぎ,右手で表革を打ち,大鼓とは対照的に多様な音色を生み出す。音高と音色を調節するために,左手で調べを締めたりゆるめたりして革面の張力を加減し,手指のあたる位置を革面の中央や周辺部にしたり,打つ強さや打つ指の本数などを変える。打音は粒(つぶ)と呼ばれ,次の4種が基本である。乙(おつ)(ポと唱える。強く低い),程(ほど)(プと唱える。弱く低い),(かしら)(タと唱える。強く高い),甲(かん)(チと唱える。弱く高い)。調子紙と呼ぶ和紙をちぎって裏革の表面(まれに表革にも)につばでつけて振動を整え,演奏中に調子紙をぬらしたり,革に息をかけたりして湿度を保ち音色を整える。

 小鼓は田楽,風流(ふりゆう)や万歳などの民俗芸能でも使われる。古くから振り回したり投げ上げたりして曲芸的に扱われ,〈しててい〉などの名称で呼ばれてきたが,これは雅楽の鼓の唱歌(しようが)〈し・てい・てい〉に由来する。小鼓の祖は壱鼓(いつこ)だといわれる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小鼓」の意味・わかりやすい解説

小鼓
こつづみ

日本の紐締式膜鳴楽器。良質の桜材でつくった長さ 25~26cmの砂時計型の胴の両端に,直径約 20cmの鉄の輪に馬皮を糸で縫いつけた膜を当て,これを縦調べと呼ばれる麻紐で締めつけ,さらに横調べを巻き,これを操作することによって皮面に加わる張力を加減する。一般には,正座した奏者が左手で調べを握って楽器を右肩に載せ,右手の指先で皮面を打って奏する。能の場合には床几に腰掛けて演奏する。小鼓は一鼓 (いっこ) の系統を引く楽器で,能楽の四拍子の構成楽器として完成し,したがって観世流,幸流,幸清流大倉流の4流が生れた。また歌舞伎の発達とともに田中,六郷,望月,福原,柏,堅田などの家元が生れ江戸時代後期以後その技術を競った。

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百科事典マイペディア 「小鼓」の意味・わかりやすい解説

小鼓【こつづみ】

日本の伝統的な打楽器。皮面の直径20cmぐらい,胴長25cm前後の小型の。能楽や長唄の囃子(はやし),下座(げざ)音楽,民俗芸能などに大鼓(おおつづみ)とともに使用される。皮を締めている調緒(しらべお)を左手で握って右肩の上にのせ,右手で打つ。打つときに調緒を締めたりゆるめたりして音色や音高を変えるのが特徴。
→関連項目四拍子

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「小鼓」の解説

こつづみ【小鼓】

兵庫の日本酒。酒名は、大正3年(1914)当時の当主が高浜虚子の弟子であったことから虚子が命名したもの。大吟醸酒「天楽」「錦上錦」、純米大吟醸酒「路上有花(ろじょうはなあり)」「風楽」「極朗讃」のほか、純米吟醸酒、特別純米酒などがある。平成2、10、12、17、18、24年度全国新酒鑑評会で金賞受賞。原料米は山田錦、五百万石、北錦、強力。仕込み水は竹田川の伏流水。蔵元の「西山酒造場」は嘉永2年(1849)創業。所在地は丹波市市島町中竹田。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小鼓」の意味・わかりやすい解説

小鼓
こつづみ

日本の膜鳴楽器の一種で、能楽、長唄(ながうた)などの囃子(はやし)、各種民俗芸能で用いられる。

[編集部]

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音楽用語ダス 「小鼓」の解説

小鼓

能楽や歌舞伎囃子、民俗芸能で用いられる。後述の大鼓とペアで使われる。身近なところでは、雛人形の五人囃子の1人が右肩に乗せている楽器。胴が砂時計のようにくびれており、“調緒”というひもで締め合わされている。右手で打って奏するが、打つ位置を変えたり、左手で調緒の張力を調整したりして音高・音色を変化させる。

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世界大百科事典(旧版)内の小鼓の言及

【単皮鼓】より

…胴は硬い厚みのある木で鼓面は直径25cmくらいあるが,縁が幅広く,鼓心と呼ばれる中央にわずかに5~7cmの孔があり,鼓面には豚革,または牛革が張られている。板鼓,皮鼓,小鼓とも呼ばれる。鼓心のそばにもう一つ小さな孔のある種類もある。…

【堂鼓】より

…木製の胴の両面に牛革を張り,木架上に設置して,2本の木槌で上から打奏する。大小の別があり,形が大きく音高が低いものを大堂鼓,南堂鼓,大鼓とも称し,形が小さく音高が高いものを京堂鼓,戦鼓,小鼓とも言う。大鼓は,鼓面の面積が大きく,音量や音色の変化も豊富で,主に十番鼓(10種の楽器を使っての合奏),吹打等の鑼鼓(らこ)()を中心とする各地の民間器楽合奏で用いられる。…

【太鼓】より

…まず膜の周囲を枠状のものに巻き付け,次にその枠を紐や革帯などで胴にかがり付けた後,胴と革帯の間に楔(くさび)の機能を果たす丸棒などを挟んで締めぐあいを調節する方法(タブラムリダンガ)や,金属の輪や紐などによって,紐や革帯をしぼって緊張度を加減する方法(インドネシアのクンダン,朝鮮の杖鼓(じようこ),日本および中国の羯鼓(かつこ))などを用いて音高を整えるほか,脇の下に太鼓を挟み,演奏中に腕で紐を押しつけて音高を変える方法(アフリカのルンガlunga)もある。しかし最も繊細であるのは日本の小鼓(こつづみ)に見られる,一打ちごとに行われる調緒(しらべお)の締め加減の微妙な調節であろう。膜を胴に直接膠着させたり,鋲(びよう)を打って取り付ける太鼓では,緊張度の調節は不可能であるため,音高や音色を調整することは基本的には不可能であるが,奏者が随時ひじやかかとあるいは手などで膜面を押しつけて緊張度を高め,音を高くする方法が用いられることがある。…

【鼓】より

…日本ではこの楽器が芸能の多くの種目に使われている。このうち小鼓(こつづみ)をとくに〈鼓〉と呼ぶことがある。〈鼓〉という語は古代インドの打楽器dudubhiまたはdundubhiから出たという説と,中国の都曇鼓(つどんこ)の音から出たという説がある。…

【能】より

…構造面では能本(のうほん)の詞章やその小段(しようだん)構成など,技法面では謡の美を息扱いとリズムの細かな変化に求めることなどがそれである。なお,囃子は,世阿弥のころすでに笛,鼓(つづみ),太鼓(たいこ)が用いられていたが,小鼓(こつづみ),大鼓(おおつづみ)の区別があった確証はなく,現在の囃子の楽型が確認できる資料は,江戸時代初頭のものまでしかさかのぼれない。狂言猿楽
【能本】
 能の脚本を古くは能本と呼んだ。…

※「小鼓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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