日本大百科全書(ニッポニカ) 「尾崎喜八」の意味・わかりやすい解説
尾崎喜八
おざききはち
(1892―1974)
詩人。東京・京橋の裕福な回漕(かいそう)店を営む家に生まれる。京華商業学校卒業。英語のほかにドイツ語やフランス語を独学し、訳詩や訳文も多い。若くして高村光太郎の知遇を得て、その感化のもとに詩人として出発する。いわゆる芸術派とも民衆詩派とも距離をおいて、その語学力によってロマン・ロラン、ヘッセ、カロッサなどから文学と人生に関する養分を吸収し、現実社会と一歩隔てた位置で、自然と内面の照応に独自の詩境を深めた。『空と樹木』(1922)以下『田舎(いなか)のモーツアルト』(1966)など多数の詩集と『山の絵本』(1935)などの随想集、『近代音楽家評伝』(1916)などの翻訳もある。
[角田敏郎]
『『尾崎喜八詩文集』全10巻(1975・創文社)』