居敬窮理(読み)きょけいきゅうり

精選版 日本国語大辞典 「居敬窮理」の意味・読み・例文・類語

きょけい‐きゅうり【居敬窮理】

〘名〙 朱子学における修養の二大課題。心をつつしみの状態に保ち、事物の理を窮め知ること。→居敬窮理。〔朱子語類‐九〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「居敬窮理」の意味・わかりやすい解説

居敬窮理
きょけいきゅうり

朱子学における学問修養の方法を示す語。居敬も窮理も程頤(ていい)(伊川(いせん))が提唱したのを朱熹(しゅき)(朱子)が継承して朱子学の理論体系のなかに組み入れた。居敬は主敬持敬ともいい、敬という状態に心を保つこと。敬とは程頤が「主一無適(しゅいつむせき)」と説明したとおり、心が一つのことに集中してふらつかないことで、雑念のない清澄厳正な精神状態をいう。窮理とは、事物にはみなそのあり方を規定する理(その事物の本質として不可欠な条件でもある)がある、その事物の理を窮め知ることをいう。理を窮めるには一木一草の理に至るまでいちいち全部知り尽くす必要があるが、そういう努力を積み重ねれば、ある段階で「豁然(かつぜん)貫通」してすべての理を一挙に了解しうるものとした。そして居敬のためには静坐(せいざ)を、窮理のためには読書(経書を中心とする)を主要な方法として説いた。朱熹はこのように居敬という心の修練の面と窮理という知的な理解の面との両面を説いたが、両者は車の両輪のごとく、心を敬という高度の緊張状態に保つことによって、初めて真理を正しく追究することができ、理を正しく理解することによって初めて高邁(こうまい)な心境を養い育てることができ、あわせて学問修養が成就すると考えた。

[末木恭彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「居敬窮理」の意味・わかりやすい解説

居敬窮理
きょけいきゅうり
Ju-jing jiu-li

朱子学が唱える学問修養の根本的方法。朱子学では,人間本性至善 (形而上) であるが,気質はそれがおおわれている (形而下) ので,「主一無適」つまり心をつつしんで,本性を散漫にしないようにするとともに,「格物致知」つまり物事の本来の理を知りつくして,人間の先天性 (形而下) 修養とが一体となって,円満で統一のある人格を完成しなければならないとした。

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