屈折計(読み)くっせつけい(英語表記)refractometer

精選版 日本国語大辞典 「屈折計」の意味・読み・例文・類語

くっせつ‐けい【屈折計】

〘名〙 物質の光に対する屈折率を測定する機械。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕

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デジタル大辞泉 「屈折計」の意味・読み・例文・類語

くっせつ‐けい【屈折計】

光に対する物質の屈折率を測定する器械

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改訂新版 世界大百科事典 「屈折計」の意味・わかりやすい解説

屈折計 (くっせつけい)
refractometer

屈折率を測定する器械。固体液体気体など対象の相違により,また原理の相違により非常に多くの種類のものが作られている。偏角法は,屈折率の異なる二つの媒質(一方は測定媒質)の平面境界面を光が透過するとき,屈折の法則に従って光線方向が変化することを利用するもので,角度の測定から屈折率を求める。図1は偏角法の一つである差動型屈折計の原理を示したもので,屈折率n1n2の二つのプリズムに図に示すように光を入射すると,偏角δは,

 n22sin2α=n12sin2α

  ±2n1sinα cosαsinδ+sin2δ

で与えられる。ここでαはプリズムの角,複号±は屈折光が斜め上に出る場合を正にとる。n1n2がほぼ等しい場合は,

 n2n1=±δcotα

したがってⅠのプリズムを標準,Ⅱのプリズムを測定試料とすれば,n1,αが既知のときδを測って試料の屈折率n2が求められる。ふつうⅠの標準に固体またはプリズム状セルに入れた液体を用い,液体試料の屈折率測定に使用される。固体試料の屈折率測定に用いられるVブロック屈折計も偏角法を用いる屈折計の一つである。

 臨界角法は全反射の臨界角を測定して透明または吸収性固体(結晶を含む)および液体の屈折率を求めるものである。図2は臨界角法の一つである液浸屈折計を示したもので,30°プリズムの部分をその屈折率n1よりも小さな屈折率n2をもつ被測定液体中に浸ける。反射鏡を用いプリズムの斜面を図のように照明すると,角αが全反射の臨界角,すなわちα=sin⁻1n2/n1)より大きな方向にはプリズム内に光が屈折して進まず,対物レンズ,接眼レンズの組合せである望遠鏡によって視野の一部分が暗く観測される。この明暗の境界線を目盛板で読み取れば,被測定液体の屈折率が求められる。図のアミチプリズムは,白色光を用いたとき境界線が色づくのを防ぐためのもので,光軸のまわりに回転して色消しを行う。30°プリズムをいろいろな屈折率をもつものに交換することによって,1.3~1.6の屈折率を小数点以下4~5桁程度の精度で測定できる。全反射法を用いる屈折計には,このほかにアッベの屈折計,プルフリヒの屈折計,結晶屈折計などがあり,固体試料の屈折率測定の場合は,試料の研磨した面を屈折率既知のプリズム面に薄い液層を介して密着させ,全反射の臨界角を測定する。

 干渉法は光路長ndnは屈折率,dは測定媒質の厚さで既知),または光路差⊿nd(⊿nは屈折率差)の測定から屈折率を求めるものである。図3は干渉法の例であるジャマン干渉屈折計を示したもので,裏面に銀めっきした同じ厚さの平行平面ガラス板をほぼ平行に置き,表面,裏面で反射する光を用い光線束を二つに分け,一方を基準セル,他方を試料セルに通した後,二つの光線束をいっしょにして干渉させ,干渉縞を望遠鏡で観測する。二つのセル内の媒質(ふつう気体)の屈折率差が⊿nであって,干渉縞がN本移動するとすれば,用いた光の波長をλとして⊿nNλ/dとなる。したがってNを測ることによって⊿n,基準セル中の媒質の屈折率を既知として試料の屈折率が小数点以下8~9桁の精度で測定できる。干渉法を用いるものには,このほかにレーリー干渉屈折計などがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「屈折計」の意味・わかりやすい解説

屈折計
くっせつけい

光の媒体(物質)の光に対する屈折率を測定する計器。二つの異なる媒体が平面を境として接しているとき、この境界面を通過する光線は屈折し、境界面の法線と光線との角度θ1、θ2はつねに次の関係を満たす。

  n1sinθ1n2sinθ2
n1n2はそれぞれの媒体の屈折率である。この関係を用い、真空の屈折率を1と定める基準に基づいて物質の屈折率が求められる。対象物質が固体の場合には、これでプリズムをつくりθ1およびθ2を測定する。対象物質が液体の場合には、臨界角、すなわちθ1が直角となるときのθ2を全反射現象によって検出する方法が効果的である(アッベ屈折計)。

 屈折率を求める他の手段として、媒体中の光の波長を測定する方法があり、一種の光波干渉計が用いられる。

[三井清人]

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化学辞典 第2版 「屈折計」の解説

屈折計
クッセツケイ
refractometer

屈折率の測定に用いる器械.アッベ屈折計,プルフリッヒ屈折計などがあるが,プルフリッヒ屈折計は取り扱いが便利,かつ精確で,広く用いられる.直角プリズムの直角をはさむ二面が水平と垂直になるように置き,水平の面の上に試料液体を入れた容器を置き,液体とプリズム面は接触させる.この接触面すれすれに水平に一定波長の単色光(NaD線,水素原子のバルマー線)の光束を入射させる.入射光線は屈折してプリズム中に入り,プリズムの垂直面からふたたび空気中に屈折して出射する.このときの出射角をi,試料液体およびプリズムのガラスの屈折率をそれぞれnnG とすると,nは,

n

で与えられる.nの測定精度は1×10-4

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百科事典マイペディア 「屈折計」の意味・わかりやすい解説

屈折計【くっせつけい】

光に対する物質の屈折率を測定する器械。ふつう屈折率のわかっている標準プリズムを物質に接触させ,境界面で起こる全反射を利用する。液体中にプリズムを浸す液浸屈折計,固体物質を30°,60°,90°のプリズムに切って同じ形の標準プリズムに接触させる(液体なら二つの標準プリズムの間に入れる)アッベの屈折計,直角の標準プリズムに直角に切った物体をのせる(液体は直接接触させる)プルフリヒの屈折計などがある。→屈折屈折の法則

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「屈折計」の意味・わかりやすい解説

屈折計
くっせつけい
refractometer

光に対する物質の屈折率を測定するための器械。液体や固体に対して使われる液浸屈折計,アッベの屈折計,プルフリヒの屈折計などがある。測定しようとする物質を,屈折率のわかっている物質でつくった標準プリズムに光学的に接触させて,その境界面で起る全反射を利用して測定するようになっている。またジャマンの干渉計は干渉を利用した屈折計で,気体の屈折率測定に使われる。そのほか精密測定のためにはその物質でプリズムをつくって分光計で屈折角をはかる方法が用いられる。

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栄養・生化学辞典 「屈折計」の解説

屈折計

 光が物体に入射したときに屈折を示すが,その屈折の度合を測定する器具.

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