屋外広告(読み)おくがいこうこく

改訂新版 世界大百科事典 「屋外広告」の意味・わかりやすい解説

屋外広告 (おくがいこうこく)

屋外に掲出される広告物の総称。種類としては広告塔,広告看板,ネオンサイン,電柱広告,ポスター,チンドン屋,空中への投光広告,アドバルーン,飛行船や飛行機による広告などがある。屋外広告は戸外の特定の場所にあって,一定期間継続して刺激を与える広告物であるが,日本古来のものには,チンドン屋のほかに移動する広告としての印半天,風呂敷唐傘,ちょうちんなどがあり,商家の看板,のれん,旗,のぼり行灯などとともに広く活用されていた。屋外広告の起源としては,すでにギリシア・ローマ時代に家屋の壁に公示や広告を描くアルブムalbumがあった。また看板の元祖として,ローマ時代の酒屋が,軒先で棒の先に灌木の枝をつけてシンボルとした例がある。日本古来の杉の酒ばやしの目印もこれに相当する。日本の文献では,《令義解(りようのぎげ)》(833)に,市の各見世が標を立てて名を出したという記述が見える。看板は室町期から江戸期にかけて,商業の発展に伴って発達した。1845年(弘化2)〈東西屋〉が大坂に,81年〈広目屋〉が東京に誕生したが,両者はともに街頭移動広告を請け負う広告業者のさきがけであり,キャラバンを組んで全国で催物をして歩いた。90年,電柱広告掲出の認可を得た東京電灯会社が,東京と大阪で営業を開始。1913年には,東京日本橋に広告気球といわれたアドバルーンが初めて揚がった。チンドン屋とともにこれらはいずれも日本独特の屋外広告である。

 屋外広告は長らく地域的メディアとして存在していたが,最近のアメリカでは規格化されたポスター・パネルなどを使って,全国的なキャンペーンを行う際の広告媒体として使用する動きが多く見られる。屋外広告は他媒体に比して建築交通の面からの規制が強く,また社会環境などとの調和がとくに求められている。欧米では大型看板は決められた場所以外には出せないというように,日本以上に屋外広告への規制がきびしい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「屋外広告」の意味・わかりやすい解説

屋外広告
おくがいこうこく

屋外に掲出、設置される広告物の総称。すでに古代ギリシア・ローマ時代に家屋の壁の一部を白く塗って公示や広告を描くアルブムがあった。日本では『土佐日記』にみえる「小櫃(こひつ)の絵(え)、曲(まが)りの大鉤像(おほぢのかた)」が文献に現れる最初といわれる。字の読めない人が多かった時代の最大のメディアであった看板の元祖は、古代ローマ時代に酒屋の軒先に掲げた常春藤(きづた)の枝で、日本では「杉の酒林(さかばやし)」がこれに相当する。室町・江戸期以降は招牌(しょうはい)と称する看板およびのれんが登場した。そのほか行灯(あんどん)、障子、旗、幟(のぼり)、蔵印、家印なども広告に利用された。今日では昼間の街頭には広告塔、電柱広告、看板、ポスター、夜間には電飾(イルミネーション)、ネオン、電気看板、電光ニュースがあり、また空に描き出す投光、アドバルーン、飛行船(機)による広告など多彩である。屋外広告の今後は、アメリカのシート・ポスター(何枚かのポスターを貼(は)り合わせて一つのポスターにしたもの)のように、ネットワーク・サインとしてのポスター・ボードやレンタル・ボードがどこまで成長するかにある。

 なお、屋外広告は、美観、安全、交通などに関係するので、他媒体に比べて強い法規である屋外広告物法(昭和24年法律189号)はじめ、建築基準法、道路交通取締法、および自治体の条例などで規制されている。

[島守光雄]

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世界大百科事典(旧版)内の屋外広告の言及

【看板】より

…日本では看板,中国では招牌(チヤオパイ)・望子(ワンズ)または幌子(ホワンズ)と呼ばれ,英語ではサインボードsignboard,あるいはサインsign,フランス語ではアンセーニュenseigne,ドイツ語ではツァイヘンZeichenと呼ばれている。看板は広告塔・はり紙などとともに屋外広告物に含まれ,常時または一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものとされている。看板の表示内容の主体となるのは,店名・業種名・商品名であって,これを示すために文字を用いるのが現代では最も多いが,店をあらわすシンボルやマーク,業種をあらわすシンボル(たとえば理髪店の赤白だんだらの棒,酒造店の杉玉),販売する商品をあらわすシンボル(たとえば眼鏡屋の眼鏡の絵や模型)など,文字によらない方法もいろいろ見られる。…

【ポスター】より

…人々の目につきやすい場所に掲示される大型の紙片をいう。屋外広告の一種。フランス語でアフィーシュaffiche,ドイツ語でプラカートPlakat。…

※「屋外広告」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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