山口[県](読み)やまぐち

百科事典マイペディア 「山口[県]」の意味・わかりやすい解説

山口[県]【やまぐち】

中国地方西端の県。本州最西端にあり,関門海峡を隔てて九州に相対する。県庁所在地は山口市。6112.30km2。145万1338人(2010)。〔沿革〕 かつての周防(すおう)国長門国の2国の地で,古代には大陸文化が北九州を経て流入した。平安時代は平氏の支配下にあったが,1185年の平氏滅亡後,大内氏が支配,義隆のとき明や朝鮮との貿易による経済力を基盤に繁栄し,西国一の大名と称された。1551年大内氏は陶(すえ)氏に破れ,陶氏ののち毛利氏が支配,防長36万9000石を領して明治に及んだ。1871年山口県となった。〔自然〕 中国山地西端部にあたり,東部の冠山山地が標高1000mを越えるほかは500m前後の丘陵性山地である。山地は断層によって分断され,錦川,厚東川,椹野(ふしの)川,阿武川などが流れるが,いずれも短く,山口盆地岩国平野のほかは低地も小規模。沈降海岸が発達,瀬戸内海大島平郡島笠戸島,日本海に青海(おうみ)島,見島などが浮かぶ。瀬戸内海側は温暖少雨で夏季夕なぎがあり,内陸は高冷多雨で積雪がみられる。〔産業〕 産業別人口構成は第1次6.8%,第2次26.9%,第3次65.3%(2005)で,第1次の減少が著しい。農業は零細で兼業農家が多い。米作を中心に,瀬戸内海側では都市近郊での蔬菜,大島ほかでのミカン,日本海側ではナツミカンを栽培する。岩国付近はレンコン産地として知られる。山地部では畜産酪農が行われる。林業ではパルプ用アカマツ,竹材を産す。かつては全国有数の水産県であったが,近年は不振。下関はフグの水揚げ全国一で知られる。日本海側の萩,仙崎(長門市)などの漁港は近海巻網漁の基地でアジ,サバ,イワシなどを漁獲,かまぼこなどの水産加工も盛ん。周防灘でのエビ漁は養殖も含めて全国有数の漁獲量がある。鉱業では全国一の無煙炭田であった大嶺炭田,硫化鉱の河上鉱山が閉山,現在は秋吉台の石灰岩と大理石が特色。主要工業地域は瀬戸内海沿岸に集中し,下関の造船,金属,化学,水産加工,宇部・小野田地区の化学,石油化学,窯業,防府の自動車,化学,周南・下松・光地区の機械,金属,石油化学,岩国の繊維,パルプ,石油化学などがあり,周南,防府などの地区は周南工業地帯と呼ばれている。県別の工業出荷額は全国中位だが,従業員1人当たりでは全国の上位にある。伝統の萩焼は有名。瀬戸内海国立公園,北長門海岸,秋吉台,西中国山地の3国定公園,岩国の錦帯橋,山口市の湯田温泉,城下町の萩など観光資源が豊富。〔交通〕 瀬戸内海沿岸の山陽本線,新幹線,山陽自動車道と国道2号線,内陸部の中国自動車道,日本海岸の山陰本線と国道191号線が幹線をなし,山陽・山陰を結んで山口線,美祢(みね)線,国道9号線と262号線が通じ,東部には岩徳線,錦川鉄道,国道187号線,西部には宇部線,小野田線が通じる。宇部に山口宇部空港が,岩国に岩国錦帯橋空港がある。
→関連項目山陰地方山陽地方中国地方

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