山月記(読み)サンゲツキ

デジタル大辞泉 「山月記」の意味・読み・例文・類語

さんげつき【山月記】

中島敦短編小説。昭和17年(1942)、「文学界」誌に、総題「古潭」として「文字禍」とともに掲載された、著者のデビュー作品。中国代の伝奇物語「人虎伝」を題材とする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山月記」の意味・わかりやすい解説

山月記
さんげつき

中島敦(あつし)の短編小説。『文学界』1942年(昭和17)2月号に、短編『文字禍』とともに『古譚(こたん)』という総題の下に載る。同年7月、筑摩(ちくま)書房刊『光と風と夢』に収録。中島敦のデビューを告げる作品。原稿では前記2編のほか『狐憑(きつねつき)』『木乃伊(みいら)』をあわせ全4編で『古譚』を形成。ともに古代世界を舞台とし、尋常ならぬできごとが展開する短編である。芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)の再来という評もあった。ことに『山月記』は、中国唐代の伝奇『人虎伝(じんこでん)』を素材として、「詩をつくること」にとらわれてしまった人間李徴の劇的な運命を、虎(とら)と化しながらなお人間の心をもつという臨界状況の下に描く佳作である。

[佐々木充]

『『李陵・山月記』(新潮文庫)』『『李陵・弟子・山月記』(旺文社文庫)』

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