岩橋千塚古墳群(読み)いわせせんづかこふんぐん

国指定史跡ガイド 「岩橋千塚古墳群」の解説

いわせせんづかこふんぐん【岩橋千塚古墳群】


和歌山県和歌山市岩橋にある群集墳。紀ノ川下流左岸の和歌山平野が一望できる丘陵地にある。発掘は明治、大正、昭和と長期にかけて行われた。その結果、5世紀から7世紀前半にかけて築造された前方後円墳円墳、方墳など約700基が集まっており、その古墳の数の多さは全国でも最大クラスであること、石室の構築方法に特色があり、その技術や内容が大陸文化の影響を示す貴重なものであることが判明。1931年(昭和6)に国の史跡に、1952年(昭和27)には特別史跡に指定された。それぞれの古墳の埋葬施設は、結晶片岩の板石を積んで長方形の空間を造った竪穴(たてあな)式石室、横穴式石室や石室を設けず板石を立ててつくる箱式石棺、また、木棺を厚い粘土で包んだ粘土槨(かく)などもある。なかでも横穴式石室にみられる石棚と石梁は最も大きな特徴で、とくに石梁には割り石を積み上げただけの石室の壁面を崩れにくくするための構造材の機能があると考えられている。そのため、将軍塚などは天井の高さ約4.3mの大きな玄室を確保することができたとみられ、床の下には排水施設があって水が外に抜けるような構造になっている。古墳公開のため、「和歌山県立紀伊風土記の丘」として墳丘と園路が整備されている。JR阪和線ほか和歌山駅からバス「紀伊風土記の丘」下車徒歩すぐ。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「岩橋千塚古墳群」の解説

岩橋千塚古墳群
いわせせんづかこふんぐん

和歌山市岩橋とその付近にある600基以上の大群集墳。紀ノ川下流域の左岸に位置する丘陵上に東西約3km,南北2.5kmにわたって分布。大部分は円墳で,少数の前方後円墳・方墳をまじえ,5世紀中葉~7世紀の築造とみられる。内部構造はこの流域で産出する緑泥片岩を用いた横穴式石室に最も特色があり,竪穴式石室・粘土槨(かく)・箱式棺もある。各種玉類・耳飾・刀剣・金銅馬具・須恵器(すえき)・土師器(はじき)を出土し,形象埴輪には人物・家形・盾形・靫(ゆぎ)・胡簶(ころく)形・動物があり,双脚輪状文形の異形品もある。土器の中に加羅(から)・新羅系陶質土器の要素を示すものがあり,石室に棚や梁を設けた特異な石室の構造とともに,外来文化の影響が注目される。国特別史跡。紀伊風土記の丘として公園化。

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百科事典マイペディア 「岩橋千塚古墳群」の意味・わかりやすい解説

岩橋千塚古墳群【いわせせんづかこふんぐん】

和歌山県和歌山市のほぼ中央,阪和自動車道の東側に点在する古墳群で,国の特別史跡。その数は確認されただけでも600基以上に及び,古墳の形態も前方後円墳から円墳・方墳など多岐にわたる。最も大きなものは全長86mの前方後円墳である天王塚古墳で,古墳群で最も高い場所に位置している。周辺は史跡公園として1971年に〈紀伊風土記の丘〉が整備され,これらのうち16基を公開している。

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