川柳(読み)カワヤナギ

デジタル大辞泉 「川柳」の意味・読み・例文・類語

かわ‐やなぎ〔かは‐〕【川柳】

川のほとりにある柳。ふつうネコヤナギをいう。かわやぎ。
ヤナギ科の落葉低木または小高木。葉は互生し、細長い楕円形もしくは披針形で裏が白い。雌雄異株。早春、葉より先に黄白色の花が穂状に咲く。日当たりの良い水辺に生える。→蒲柳の質
番茶の上質なもの。
川柳せんりゅう」を訓読みにした語。柄井川柳からいせんりゅう、または川柳点せんりゅうてんのこと。
[類語]猫柳枝垂れ柳青柳

せんりゅう〔センリウ〕【川柳】

柄井川柳からいせんりゅう
江戸中期に発生した雑俳の一。前句付け付句が独立した17字の短詩で、その代表的な点者であった初世柄井川柳の名による。季語切れ字などの制約はなく、口語を用い、人生の機微や世相・風俗をこっけいに、また風刺的に描写するのが特色。川柳点。狂句。
[類語]狂句雑俳

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精選版 日本国語大辞典 「川柳」の意味・読み・例文・類語

せんりゅう センリウ【川柳】

[2] 〘名〙 (「川柳点」の略) 江戸中期に発生し、一七音を基準として機智的な表現によって、人事、風俗、世相などを鋭くとらえた短詩型文学。もともと俳諧の「前句付(まえくづけ)」に由来するが、元祿(一六八八‐一七〇四)以降、付味よりも、滑稽、遊戯、うがちなどの性質が拡充された付句の独立が要求されるようになり、一句として独立し鑑賞にたえる句を集めた高点付句集が多く出版され、新しい人事詩、風俗詩となった。享保(一七一六‐三六)頃から、点者の出題に応じた「万句合(まんくあわせ)」が江戸で盛んになり、その点者、柄井川柳が代表的存在であったところから「川柳」の名称が生まれる。文化・文政(一八〇四‐三〇)頃、「狂句」とも呼ばれた。川柳点。
黄表紙・金々先生造花夢(1794)「仰向いて搗屋(つきや)秋刀魚(さんま)をぶつり食ひ、とは川柳の名句であった」

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改訂新版 世界大百科事典 「川柳」の意味・わかりやすい解説

川柳 (せんりゅう)

前句付(まえくづけ)から独立した雑俳様式の一つ。川柳風狂句。17音を基本とする単独詠だが,発句(ほつく)のように季語や切字(きれじ)を要求せず,人事人情を対象にして端的におもしろくとらえる軽妙洒脱な味を本領とする。江戸の柄井川柳が《柳多留(やなぎだる)》(初編1765)で前句付の前句を省く編集法をとったため,しだいに付け味よりも付句一句の作柄が問題とされ,やがて5・7・5単独一句で作られるようになり,初代川柳の没後,〈下女〉〈居候〉などの題詠として前句付様式から離脱独立した。〈川柳〉の名称が一般化したのは明治の中ごろからである。

 初代川柳は選句の基準として3分野を設定し,〈高番(こうばん)〉(古事,時代事),〈中番(なかばん)〉(生活句),〈末番(すえばん)〉(恋句,世話事,売色,下女)に分けており,以後,代々の川柳もこれを踏襲している。まさに〈人の挙動(ふるまい),心のよしあし,尊卑の人情,上下の人心の有様,其外,世の事情をざれ句にいへるもの〉(《塵塚談》)であって,世態人情を軽妙にうがち諷する詩風を樹立したが,初代の死と寛政改革とが重なって打撃をうける。〈役人の子はにぎにぎを能(よく)覚え〉(《柳多留》初編),〈坪皿の明くを見て行くしち使〉〈寝ごい下女車がゝりを夢のやう〉(同三編)など,政治,博奕ばくち),好色の句が《柳多留》の再板本ではさし替えられており,自由な発想も政治的圧力に封ぜられた。さらに天保改革にあたって5世川柳の腥斎佃(なまぐさいたつくり)(1787-1858)は〈敬神愛国,勧善懲悪〉という道徳至上の目標に掲げるなど,初期の批判的詩精神を消失してしまった。皮肉なことに,川柳風狂句は前句付様式から独立をかちえたと同時に,そのはつらつとしたエネルギーを失ったことになる。しかし狂句人口は増加し,江戸を中心に,北は山形,米沢へ,東は相模,松本,名古屋,飛驒,京,大坂に拠点ができ,全国的な支持を受けて広まったが,やがて知的遊戯におちた狂句をきらい,初代の古川柳への復古をとなえる明治の新川柳運動の標的にされることになる。
雑俳(ざっぱい)
執筆者:

1903年(明治36)井上剣花坊阪井久良伎(くらき)の,川柳は《柳多留》(初編)に戻れという提唱で近代川柳は始まる。2人はそれぞれ《日本》《電報》両新聞に拠って普及につとめた。剣花坊門の村田周魚は《川柳きやり》(1920),川上三太郎は《川柳研究》(1929)を発刊し,久良伎門の前田雀郎は24年丹若会を結成,今井卯木が1909年関西川柳社を創立,西田当百,岸本水府の《番傘》(1913),麻生路郎じろう)の《川柳雑誌》(1924),椙元(すぎもと)紋太の《ふあうすと》(1929)が生まれるに至った。吟社の数は現在では全国800余社を数えるに至っている。
執筆者:

川柳(人名) (せんりゅう)

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百科事典マイペディア 「川柳」の意味・わかりやすい解説

川柳【せんりゅう】

前句付から独立した雑俳様式で,滑稽(こっけい),諧謔(かいぎゃく),風刺を主旨とする江戸文芸の一種。前句付の点者柄井(からい)川柳の点を川柳点と呼んだが,その高点句集《柳多留》で前句付の前句を省いて,付句を単独で示す編集方針をとったため,付味(つけあじ)より1句独立の作柄に関心がうつり,5・7・5単独1句でつくられるようになった。これがやがて川柳風〈狂句〉と呼ばれ,明治期には〈川柳〉と呼ばれるようになった。発句のような季題,切れ字などの制約がなく,自由な人事詠を可能にしたが,卑俗,また知的遊戯に陥りやすくもある。
→関連項目江戸っ子江戸文学狂句雑俳

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「川柳」の意味・わかりやすい解説

川柳
せんりゅう

江戸時代中期以後,江戸を中心に流行した 17音詩。雑俳の一つである前句付 (まえくづけ) が,その付合 (つけあい) の興味よりも一句としてのおもしろみをねらって独立したもの。名称は,柄井 (からい) 川柳の点じた前句付を「川柳点の前句付」「川柳点」と呼んだのが,同種のもの一般の称となり,大正になって「川柳」に定着。俳句と異なり,季語,切字 (きれじ) の約束がなく,人事万般を題材にし,主として口語を用い,簡潔,滑稽,機知,風刺,奇警を特徴とする。作者は無名の一般庶民で,文化史や庶民言語の資料としても貴重。『川柳評万句合』 (1757) ,『柳多留 (やなぎだる) 』『武玉川 (むたまがわ) 』などの選句集に代表句がみられる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「川柳」の解説

川柳
せんりゅう

雑俳の一種。柄井(からい)川柳が評点した前句付(まえくづけ)「川柳点」の略称。前句付の題(前句)を省略し,付句を独立させたもの。俳諧の発句同様五七五の詩型をもつが,切字や季題などに束縛されず,自由な表現と内容の滑稽さ,風刺性,奇警さを特徴とする。川柳の前身である前句付の最盛期は宝暦~天明年間(1751~89)で,点者も川柳・露丸・机鳥(きちょう)ら二十数名に及び,「万句合」が盛んに刊行され,そのうちの川柳点の佳句が「誹風柳多留(やなぎだる)」「誹風柳多留拾遺」として出版され,川柳の規範となった。化政期以後は内容・句調とも低俗化し,幕末から明治初年に衰微期を迎えるが,明治30年代後半には民衆詩として復活・新生した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「川柳」の解説

川柳
せんりゅう

江戸中期から盛んになった狂句
1757年柄井 (からい) 川柳が点者 (てんじや) (選者)となって前句付 (まえくづけ) (7・7の下句を題として前句5・7・5をつけさせる)の勝句を集めた川柳評万句合 (まんくあわせ) を版行し,以来江戸庶民の間に盛行。俗語体で人情風俗の機微を「うがち」の中でとらえた。最初の川柳集は,彼の選句を集めた『誹風柳多留』で,167編まで刊行され,宝暦・安永・天明(18世紀中期)が最盛期。しかし幕末になると,卑俗になり,技巧のみに走るようになった。

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飲み物がわかる辞典 「川柳」の解説

かわやなぎ【川柳】


緑茶の一種で、番茶の上等なもの。煎茶用に摘採され、その製造工程でより分けられた少し大きめの葉を用いたものをいうことが多い。◇「かわやぎ」ともいう。

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日本文化いろは事典 「川柳」の解説

川柳

川柳は、五・七・五の十七音からなる定型の短詩の事を指し、ユーモアや風刺〔ふうし〕精神、言葉あそびを基調としています。江戸時代中期頃から、季語も切れ字もない、自由な口語詩として流行しました。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「川柳」の解説

川柳 (カワヤナギ)

植物。ヤナギ科の落葉低木,園芸植物。ネコヤナギの別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の川柳の言及

【チャ(茶)】より

…番茶には硬化した茶葉から製造したものと,荒茶再製時に選別したものとがある。川柳(かわやなぎ)は上・中級煎茶から選別された上級番茶であり,ほうじ茶は番茶を茶褐色になるまで加熱したもので,独特のこうばしい香りがある。 釜炒茶は中国で生産される緑茶の大部分を占め,形状,産地などで数十種の銘柄がある。…

【柄井川柳】より

…なお,この定例会のほか,休会中も,角力会や組連主催の五の日興行の〈五五(ごご)の会〉の撰もしたが,彼の名を高めたのは高点付句集《柳多留》であった。単独句鑑賞用のこの句集が,独立詠としての川柳風狂句という新様式を生み,前句付点者川柳は,川柳風狂句の祖と仰がれることになる。ただし,彼の作品は発句3句のみで,作品をもたぬ点者として特異な存在といえる。…

※「川柳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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