川越街道(読み)カワゴエカイドウ

デジタル大辞泉 「川越街道」の意味・読み・例文・類語

かわごえ‐かいどう〔かはごえカイダウ〕【川越街道】

国道254号線の、東京都豊島区東池袋と埼玉県川越市新宿町の間における呼び名。江戸時代中山道板橋宿から分岐する脇街道として整備された。現在は東池袋が起点。

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日本歴史地名大系 「川越街道」の解説

川越街道
かわごえかいどう

中山道板橋いたばし宿(現東京都板橋区)から分岐し上板橋宿(現同上)を経て川越に達する道を江戸時代には川越往還と称していたが、近代以降、川越街道とよび習わし、現在に至っている。すでに中世に川越街道の前身はあったとみられ、扇谷上杉氏は河越城とともに江戸城を築き、河越―江戸間の街道を整備したといわれる。文明一八年(一四八六)から翌年にかけて東国を巡遊した聖護院門跡道興准后の「廻国雑記」に、新座にいくら野火止のびどめ(現新座市)付近の記述があり、また「ひさおりといへる里に市侍り」などの文もみられる。「ひさおり」は膝折ひざおり宿(現朝霞市)で、街道を中心として市場町が成立していたことを伝えている。また太田道灌の招きで関東を訪れた万里集九は、長享二年(一四八八)に江戸から河越へ行く途中の白子しらこ(現和光市)で宿泊しており、紀行詩文集「梅花無尽蔵」にそのことが記されている。

〔道法・宿駅〕

天正一八年(一五九〇)に関東に入国した徳川家康は全国支配体制を確立するなかで道路網を整備していくが、こうした施策に基づいていわゆる五街道の制が定められる。同時に脇往還も整備されることになるが、川越街道も有力家臣の城下町川越と江戸を結ぶ道路として整備されている。田園簿の武蔵国道法には「江戸牛込御門より熊谷迄道法」として川越街道のことが記されている。ここに記された道法・道幅・橋梁の長さなどは次のとおりである。牛込うしごめ御門(現東京都千代田区)―上板橋は一里三一町・道幅三間・高田たかだ川六間、上板橋―練馬ねりま(現東京都練馬区)は一里一一町・道幅四―五間・王子おうじ川七間、練馬―白子は一里・道幅四―五間・白子川二間、白子―膝折は三三町・道幅四―五間、膝折―大和田おおわだ(現新座市)は三三町・道幅四―五間、大和田大井おおい(現大井町)は一里一四町・道幅四―五間・さかい川歩渡り五間、大井―川越は二里六町・道幅六間、川越―伊草いぐさ(現川島町)は一里一六町・道幅二―三間・東明寺川四間・落合おちあい川舟渡り三〇間、伊草―松山(現東松山市)は二里二三町・道幅一―二間、松山―熊谷は三里三町・道幅一―二間・市川歩渡り一〇間・荒川歩渡り五〇間、道法合一六里二六町。牛込御門から川越までは九里二〇町である。上板橋から川越までの道路は整備されていたとみえ、道幅は四―六間という広さである。武蔵国道法には中山道や日光道中などの主要街道の道幅も記されているが、これらは四―六間である。

川越街道
かわごえかいどう

江戸時代に中山道板橋宿(下板橋宿)のうちの平尾ひらお宿から分岐し、上板橋宿(現板橋区)下練馬しもねりま宿(現練馬区)白子しらこ宿(現埼玉県和光市)膝折ひざおり宿(現同県朝霞市)大和田おおわだ宿(現同県新座市)大井おおい宿(現同県大井町)を経て、仙波せんば(現同県川越市)から川越城下に達する道筋は川越往還とよばれた。近代に入ると、この道を川越街道とよび習わし、現在も用いられている。なお中世すでに江戸と河越(川越)を結ぶ幹線道があり、江戸時代の川越往還の前身となったとみられる。

江戸時代の川越往還の前身となる中世の道筋が主要な幹線道として整備される大きな契機となったのは、享徳三年(一四五四)に勃発した享徳の乱であった。同乱で扇谷上杉氏は古河公方勢力に対抗するうえで河越・江戸・岩付いわつき(岩槻)に城を構築し、軍事拠点と位置付けている。このうち江戸城は康正二年(一四五六)から長禄元年(一四五七)にかけて、扇谷上杉氏の家宰太田道灌が築城、河越と江戸を直結する中世の「河越街道」は守護上杉氏が武蔵国を支配するうえで最も重要な幹線路となったといえる。文明八年(一四七六)に起きた長尾景春の乱では、北・板橋・練馬各区周辺地域を拠点としていた豊島氏は景春に与同し、乱の鎮圧にあたった道灌と対立する。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「川越街道」の意味・わかりやすい解説

川越街道
かわごえかいどう

埼玉県川越市と東京を結ぶ街道。全長約 30km。現在は国道 254号線の一部にほぼ相当する。近世の川越街道は江戸の板橋宿で中山道と分れ,上板橋,下練馬,白子 (和光市) ,膝折 (朝霞市) ,大和田 (新座市) ,大井の各宿場があり,中山道の重要な脇往還であった。埼玉県内では昔ながらのケヤキ屋敷林に囲まれた街村がみられる。マツ並木やスギ並木も整えられていたが,今日ではその名残りをほとんどとどめていない。

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