精選版 日本国語大辞典 「巴・鞆絵」の意味・読み・例文・類語
とも‐え ‥ヱ【巴・鞆絵】
[1] 〘名〙
① 尾を長く引いた曲線の円頭を大きく表現した文様の名称。俗に波頭(なみがしら)を図案化したといい、弓具の鞆(とも)の形象に酷似することによる呼称。その形が左巻きか右巻きかによって左巴、右巴があり、円頭の組み合わせによって二つ巴、三つ巴がある。ともえの丸。ともえ波。
※平家(13C前)一「五節には、『白薄様、ごぜむじの紙、巻上の筆、鞆絵かいたる筆の軸』なむど、さまざま面白事をのみこそうたひまはるるに」
② 巴の文様を描いた軒や床の板の木口の部分。
※江家次第(1111頃)一〇「其東西北面懸二亘帽額一 不レ隠二鞆絵一、木工寮作二舞台一、左右衛門進二柳梅一」
③ 巴の文様を描いた網代の車。
④ まるく一方に回る様子をたとえていう語。
※浄瑠璃・松風村雨束帯鑑(1707頃)龍神風流「ともゑにまはれば、ともゑにをっかけ」
⑤ 紋所の名。①を図案化したもの。その数によって一つ巴、二つ巴、三つ巴の別があり、その形が左巻きか右巻きかによって左巴、右巴の別がある。左三つ巴、釣巴、抜け巴、板倉巴など種々ある。巴の紋。巴波の紋。
※承久記(1240頃か)上「一院彌御心武く成らせ給ひて、先づ巴の大将を討たばやと仰せられければ」
⑥ 「ともえがわら(巴瓦)」の略。
※雑俳・柳多留‐四三(1808)「草の波巴に変るはんぜうさ」
⑦ 三者が、入り組んだ状態になること。
※彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉須永の話「もし千代子と高木と僕と三人が巴(トモヱ)になって恋か愛か人情かの旋風(つむじかぜ)の中に狂ふならば」
[2]
[一] 「ともえごぜん(巴御前)」のこと。
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