巻繊(読み)けんちん

精選版 日本国語大辞典 「巻繊」の意味・読み・例文・類語

けん‐ちん【巻繊】

〘名〙 (「ちん」は「繊」の唐宋音) 中国から伝わって日本料理化した普茶(ふちゃ)料理の一種。けんちゃん。
(イ) 大豆もやしを炒めて湯葉で巻き、煮びたしにしたもの。
(ロ) せん切りの大根椎茸、きくらげ、ささがきごぼう、崩した豆腐などを油で炒め、酒、みりんしょうゆで調味し、湯葉か油揚げで巻いて揚げたもの。
② 「けんちんじる(巻繊汁)」の略。《季・冬》
俚言集覧(1797頃)「けんちん 豆腐牛房芋その外色々時の菜を入て油にて煎て汁の物にするをけんちんといふ」

けん‐ちゃん【巻繊】

〘名〙 (「ちゃん」は「繊」の唐宋音) =けんちん(巻繊)〔俚言集覧(増補)(1899)〕

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デジタル大辞泉 「巻繊」の意味・読み・例文・類語

けん‐ちん【繊】

《「ちん(繊)」は唐音椎茸しいたけ・ごぼう・にんじんなどをせん切りにして味付けをし、湯葉で巻いて油で揚げたもの。現在は、つぶした豆腐を野菜とともに油で炒め、醤油・酒などで調味したものをいう。元来は禅僧が中国から伝えた普茶ふちゃ料理

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改訂新版 世界大百科事典 「巻繊」の意味・わかりやすい解説

巻繊 (けんちん)

中国から伝えられた卓袱(しつぽく)料理の一種。〈ちん〉は繊の唐宋音。巻煎とも書き,〈けんちえん〉〈けんせん〉などとも呼ぶ。1730年(享保15)刊の《料理網目調味抄》では,ゴボウキクラゲのせん切りとセリを湯葉で巻いて油で揚げ,小口切りにしてショウガ酢,煎酒(いりざけ)で供するとしており,後続の江戸時代の料理書では材料に多少の差はあるものの,おおむね油でいためた具を湯葉で巻き,それを揚げたものになっている。現在行われているけんちん汁は,ダイコンニンジン,ゴボウ,シイタケ,キクラゲなどの細切りと豆腐のくずしたものを油でいため,だし汁を加えてしょうゆで調味することが多い。けんちん蒸しは,白身の魚をひらいて淡味の漬け汁にひたしておき,油でいためた豆腐や野菜を腹に詰めて蒸し,薄いクズあんをかける。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「巻繊」の意味・わかりやすい解説

巻繊
けんちん

巻煎とも書く。料理の一種で,3種類ある。 (1) 卓袱料理 (しっぽくりょうり) の一つ。もと禅僧がもたらした中国料理。ゆでたえびの身や白身の魚を細かくほぐし,千切りにしたしいたけ,笹がきにしたごぼう,銀なんなどとともに煮つけ,薄焼き卵に包み込み,小口切りにする。 (2) 精進料理の一つ。煮沸した豆腐を袋に入れて水を切り,細かくほぐして味つけし,銀なん,小口切りにしたごぼう,しいたけ,麻の実を煮たものを,薄皮状に広げた豆腐の上に載せて巻き,美濃紙に包んで蒸してつくる。 (3) 家庭的料理の一つ。巻繊汁。豆腐を布に包んで水けを除き,ごま油で炒め,別に出し汁を加えて汁とする。

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百科事典マイペディア 「巻繊」の意味・わかりやすい解説

巻繊【けんちん】

中国から日本に伝わった料理。繊(せん)切りにした材料を巻くという意で,ダイコン,ニンジン,シイタケ,ゴボウなどを細切りにして油でいため,豆腐をくずして加える。これを湯葉や薄焼き卵で巻き,揚げたり蒸したりする。巻繊汁は上記材料をいため,これに清(すまし)汁を加えて汁にしたもの。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「巻繊」の解説

けんちん【巻繊】

普茶(ふちゃ)料理の一つ。野菜のせん切りとくずした豆腐を炒め、ゆばや油揚げなどで巻いて油で揚げたり煮たりしたもの。または大豆のもやしを炒めてゆばで巻き、煮浸しにしたもの。◇「ちん」は唐音。

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