市人(読み)いちびと

精選版 日本国語大辞典 「市人」の意味・読み・例文・類語

いち‐びと【市人】

〘名〙
古代政府の管理する市場内に一定時刻に集まり、交易を行なう特権を有したもの。女性は市女(いちめ)という。ともに市籍帳に載せられ地子を免除される。市司(いちのつかさ)監督を受ける。〔三代格‐一九・貞観六年(864)九月四日〕
② 市に集まってきて、物を売る人。また、町に住む商人。あきびと。
出雲風土記(733)嶋根「市人(いちびと)(よも)より集ひて、自然(おのずから)(いちくら)を成せり」
③ 町に住んでいる人。
※俳諧・蕪村句集(1784)秋「市人の物うちかたる露の中」

し‐じん【市人】

〘名〙 市街地に住む人。町の人。市井一般人。また、商人。いちびと。
実語教(12C後か)「雖師不学、徒如市人
花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二四「英仏人民の性質相異なるは文武の人を論ぜず市人商賈に至るまで」 〔史記‐信陵君伝〕

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デジタル大辞泉 「市人」の意味・読み・例文・類語

いち‐びと【市人】

市中に住んでいる人。
「谷中あたりの―等は、上を下へと騒動なし」〈逍遥当世書生気質
市で物を売る人。また、町に住む商人。
「これなる―を見れば…、いづれもいづれも不思議なる売り物かな」〈謡・錦木

し‐じん【市人】

町で暮らす人。
商人。

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普及版 字通 「市人」の読み・字形・画数・意味

【市人】しじん

商人。

字通「市」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の市人の言及

【東市・西市】より

…平安京の場合は,古図によると,左右京7条2坊3・4・5・6坪が〈市町〉で,その周囲に〈外町〉なる区画が各2坪ずつ計8坪分拡張されている。市内では市人(《延喜式》では市人籍帳に登録された市籍人)が品目別の鄽(てん∥みせ)(令では肆(いちくら))で売買を行っていた。《日本霊異記》中巻19話によると,平城京東市には東西の門があったことが知られるが,前述の藤原京の市の場合からみて,おそらく南北にも門が開いていたのであろう。…

※「市人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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