市女(読み)いちめ

精選版 日本国語大辞典 「市女」の意味・読み・例文・類語

いち‐め【市女】

〘名〙
① 市で物をあきなう女。市に住む女。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「とくまちといふ、いちめの富めるあなり」
滑稽本東海道中膝栗毛(1802‐09)三「かのいち女にそのことをきき合す」

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デジタル大辞泉 「市女」の意味・読み・例文・類語

いち‐め【市女】

市で物を商う女。
「―来り酒売る」〈兼盛集詞書

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改訂新版 世界大百科事典 「市女」の意味・わかりやすい解説

市女 (いちめ)

市に現れる女の商人。平安時代には都の東・西市で市人(いちびと)とともに,政府の買上品や,余剰物資の売却品の取扱いに従事したが,東・西市が衰微するに従い,私商人化した。彼女らがかぶる独特な形をした,晴雨兼用のかぶり笠を市女笠という。平安末期に流行した装飾経の一つ,〈扇面法華経冊子〉の下絵に,市女笠をかぶった市女らしい女性が,京の町に並ぶ店頭に立ち寄っている姿が活写されている。古文献にみられる販女販婦)(ひさぎめ)は,市女が公的性格を失ったのちも,営みつづけたと思われる女性行商人のことである。もっとも,販女は必ずしも市女の系統をひくとはかぎらず,海人の妻女などもいたであろう。概して,女性は古くから交易主役を担って市に登場し,また各地を行商して歩いたといえる。このことは,現在の民俗をみてもうなずける。
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